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蜂蜜エッセイ応募作品

リーダーなき秩序社会

渡辺 碧水

 

 EUからの英国の「合意なき離脱」、東京五輪マラソンの札幌決着の「合意なき決定」。二〇一九年の話題語。
 世界は今、米国が役割を放棄した「リーダーなき世界」だという。聞いたような言葉だと思ったら、蜜蜂社会は「リーダーなき秩序社会」だとの説明を思い出した。
 健康情報誌『ヘルシスト』二百十七号(二〇一三年一月発行)の記事「そこが知りたい!ミツバチ不思議百科」だった。
 ともすると、何万匹もの蜜蜂の社会を、産卵する一匹の女王蜂が群れを統治し支配している、と思いがちである。大多数の雌の働き蜂は、君臨する女王蜂の世話をいっさい行い、大集団の日常生活の仕事もすべてを引き受け、忙しく働き続ける。生殖を担う少数の雄蜂は、ぶらぶらしていて交尾をするだけ。そんな階層組織を思い浮かべがち。
 それは誤解。その原因の一つは、産卵という大役を一匹で受け持つがゆえに「女王蜂」と名づけたことにあるらしい。蜜蜂は整然とした秩序のある集団生活を営むが、リーダーシップを発揮して群れを統率する役がいないので、「リーダーなき秩序社会」というのが正しい理解の仕方になる。
 女王蜂がその役にない証拠を少し挙げてみる。
 同じ雌でも、働き蜂に比べて女王蜂は、脳の容積が小さく、目の大きさも半分ほど。女王蜂は巣外に出ることがほとんどないので、飛行能力もさほど発達していない。女王蜂が巣外へ出る機会は生涯で二回。交尾と分封(巣分かれ)が各一回。
 女王蜂が飛ぶときは、群れを引き連れているかのように見える。女王蜂が発するフェロモンの刺激を追うから。だが、働き蜂が出す集合フェロモンの方が強力で、すべての蜂を集合させ、群れが住む場所を決定するのは働き蜂。
 また、蜜蜂の女王蜂は、数年も生きるのに、足には花粉を集める構造がなく、花蜜を貯めるための胃も痕跡的なものがある程度であるから、単独で一から巣作りを行うことはできない。
 一方、働き蜂の体は、一か月ほどの寿命にもかかわらず、仕事の内容に応じて生理的変化をし得る機能が体系化されている。
 人類は約百五十万年前に地球上に登場し、集団生活を営むようになったのは約一万年前。現在に至るまで、完成された社会制度を一つも持ったことがない。驚くことに、蜜蜂の社会が今の形になったのは約五百万年前だそうだ。

 

(完)

 

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