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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂の子と涙

真間 タケ

 

 息子が、小学六年生の夏休みに、鉱物採集の長野県キャンプへ一人で参加した。どうにか一週間をこなし、無事に帰ってきた。
 家に着くやいなや、大きなリュックから何かを大事そうに取り出した。ニコニコ顔で手渡された小さな瓶詰。見ると蜂の子の佃煮だった。私は、そのグロテスクな見た目に、瓶を持っているのが精一杯だった。私は、昆虫が苦手。幼虫は、更にダメなのだ。
 夕食の食卓につくと、息子は開口一番、
 「ママ、蜂の子出すの忘れているよ。」
 「あちゃー、覚えていたか。」心の中で呟く。
 せがまれて、仕方なく蜂の子の瓶詰を出すと、待ちきれない様子で、蓋を開け、白いご飯に蜂の子を乗せ頬張る。何度も、私に食べる事を勧める息子に、ついつい、きつい口調で「無理だってば。」と言ってしまった。息子は、それきり黙ってしまい、ポロポロと大粒の涙をこぼしながら、うつむいて蜂の子ご飯を食べていた。へし折ってしまった息子の気持ち。私には、食べるという選択肢しか無い。恐る恐る蜂の子を口に運ぶ。クニュっという独特の食感とモタッとした甘みが、口の中に広がる。「普通に美味しいね。」と言うと、息子は、満足げに頷き、お互いに涙目で笑いあった。
 その夜、キャンプでお世話になった知人にお礼の電話をした時、キャンプ中の息子の様子を知った。キャンプから3日目の夜、ホームシックになり、あまり食事もとれず元気が無くなってしまった。そこで、知人は、「大昔から伝わる元気になる夢の様な食べ物の蜂の子」の話をし、息子に食べさせてみたそうだ。その蜂の子のおまじないが大いに効いて、頑張れたらしい。そして、「あー、もう疲れたぁ。」と、いつも言っているお母さんへのお土産にすると話していたそうだ。
 なるほど、そういう事だったのか。大粒の涙の訳は、私の想像以上に深かったのだ。今度は、私が大粒の温かい涙。「本当に、ありがとうね。」

 

(完)

 

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