城穂歌
大学受験を控えた高校三年生になると、眠気覚ましにコーヒーを飲む人が増えてくる。私の友人達もブラックコーヒーをよく飲んでいる。その姿は何処か大人を感じさせる。私はというと、コーヒーより紅茶派、コーヒーは飲めてコーヒー牛乳レベルのお子様舌なのだ。「コーヒー一杯。」と軽やかにコーヒーを注文するのが私の憧れでもあった。そんなある日、私は思い切ってカフェラテを注文することにした。コーヒーそのままを飲むのは初めのハードルとしては高いと考えた故である。しばらくすると、温かいカフェラテが運ばれてきた。勇気を出して一口。カフェラテは温かくて、やっぱり少し苦かった。注文したことをチョットだけ後悔しつつ、私はセルフサービスコーナーに目をやった。そこには"honey"と書かれたボトルが置いてあった。ハチミツか…!私は席を立ちまだ温かいカフェラテの中にとろっとハチミツを落とした。カフェラテの泡の中に埋まったハチミツをマドラーでくるくると混ぜる。途端にハチミツの優しい匂いが湯気と共に私を包み込んだ。そこには、何だか安心している私がいた。
期待を寄せつつそっと一口。ほんのり甘いハチミツが私の舌に滑らかに広がり、ハチミツとカフェラテの良い香りがより一層私の感情を揺さぶった。美味しい!最高の気分のまま私はそのカフェラテを飲み干した。私の心は不思議と満足感と充実感、そして幸せで一杯になっていた。
以来、私のコーヒータイムにはハチミツが欠かせなくなった。いつの日かブラックでコーヒーが飲める日が私にも来るかも知れない。でも、この初めて飲んだハチミツ入りのカフェラテの味は生涯忘れないだろう。
(完)
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