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「虻蜂とらず」の由来(二)

渡辺 碧水

 

 [「虻蜂とらず」の由来(一)から続く]
 改めて、新海氏記述の一部を直接引用する(以降、敬称略。「新海記述」と略す。句読点と記号類は変更)。引用元は【新海栄一「大熊さんに送る言葉」『KISHIDAIA』第七十二号、十三~十五頁、一九九七年十月刊】

 「虻蜂取らず」の言葉が最初に出てくるのは、江戸時代後期の一八二〇~三〇年頃に活躍した為永春水等の人情本の中の、花の志満台四ノ十九回中に「悪くすると虻蜂取らずにならうもしれねーや」という話しが出ています(日本国語大辞典、小学館)。

 国立国語研究所所蔵の筆耕木版印刷本の出典に直接当たってみた結果、該当部分の記述は「悪るくすると虻蜂とらずにならふも知れねへやス」(漢字には振り仮名あり)であった。
小学館発行『日本国語大辞典』の一九七二年第一版と一九七九年第二版の第一巻は、人情本 ・花の志満台 ・四 ・十九回「悪くすると虻蜂取らずに、ならうも知れねえやス」であった(二〇〇六年精選版第一巻では、人情 ・花の志満台(一八三六-三八)四「悪くすると虻蜂取らずに、ならうも知れねえやス」に修正)。いずれも、虻蜂には片仮名で振り仮名あり。
引用元本の書名は、正式には『比翼連理花廼志満台』で、略称なのか、表紙が『花の志満台』の場合もある。全四編で、初編は一八三六(天保七)年、二編は一八三六年、三編は一八三七年、諺の書かれている四編は一八三八(天保九)年の刊行。
諺の収載部分は『比翼連理花廼志満台第四編巻之上第十九回、松亭金水編次』となっている。
繰り返しになるが、新海栄一の記述にも『日本国語大辞典』にも明記されていない事項を含めて整理すると、諺「虻蜂とらず」の収載本は次の書誌となる。
松亭金水作、歌川国直画『比翼連理花廼志満台(花の志満台)』第四編の上第十九回、一八三八年刊(国立国語研究所などが所蔵し、画像公開もしている。板元は江戸の丁子屋平兵衛または不詳)
なお、作者の松亭金水(しょうてい ・きんすい、一七九七~一八六三年)は江戸時代後期の人情本などの作家。深海栄一のあげた為永春水の弟子。
これで確認できたことは、一八三八年には「虻蜂とらず」の用例があった(初出とは言い切れない)こと、いま主流の「取らず」の漢字書きは、昔は「とらず」の平仮名書きだったこと、の二点である。
[「虻蜂とらず」の由来(三)へ続く]

 

(完)

 

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