山本由美子
我が家のカレーが中辛に決まったのは、いつからだっただろう。
二男は赤ちゃんカレーを食べず、最初からみんなと同じ大人用を食べたがった。甘口カレーからスタートして、小学校の高学年の頃には中辛になったかもしれない。
そして高校生になった頃、彼は急に言い出した。
「将来の夢はカレー屋さん!」
え?なんて?私も夫も公務員。両方の祖父はサラリーマン、祖母は主婦。飲食店をしている親戚もないし。自営業とか、難しいと思うけどなあ。さりげなく、違う夢に誘導しようとした。でも、調理の専門学校のパンフを取り寄せ、家でもカレーを試作し始めた。
その時に二男が見つけたのが、カレーにはちみつを入れるレシピ。
「はちみつと、バルサミコ酢、これは絶対入れないと!」
はちみつはある。バルサミコ酢もスーパーで購入。入れてみた。美味しい!辛味がまろやかになり、風味も増す。ガラムマサラやターメリックなどの香辛料とも合っている。
「おいしいやん!」
「そやろ?」
にんまり笑う二男。これで自信をつけ、カレー屋さん街道をまっしぐら…かと思われたが、いつしか二男のカレー屋さん熱は冷め、残ったのはカレーにはちみつとバルサミコ酢を入れるレシピ。
二男は遠くの県に就職して家を出た。長男も一人暮らし。残った夫が好きなカレーは二週間に一回くらいは作る。もちろん、はちみつとバルサミコ酢入り。作り過ぎて、三日ほど続けて食べるけど。
「でも、こんなにはちみつたっぷり入れて、これってもしかして、甘口カレー?!」
ま、いいか。おいしいから。息子達が帰省して、カレーを食べてくれることを いつもひそかに待つ日 々だ。
(完)
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