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蜂蜜エッセイ応募作品

蜜蜂も停まるバス停留所

渡辺 碧水

 

 二〇一九年七月中旬、「カラパイア」(不思議と謎をテーマに、宇宙規模の森羅万象を観察していくニュースサイト)を読んでいて、興味深い記事に出合った。
 バスの停留所の待合所の屋根に草花を植え、蜜蜂が気軽に立ち寄れる場所にしたというニュースである。もちろん、美しい緑は人の気持ちを和ませる配慮もある。
 そんなユニークなバス停の待合所を作った話は、残念ながら日本ではない。ヨーロッパ北西部にあるオランダのことである。人と蜜蜂の共存を目指すこの新事業に着手したのは、同国で第四番目の大都市ユトレヒト。
 市内にある三百十六か所のバス停待合所の屋根に、ベンケイソウ科セダム属の多肉植物であるセダムが植えられた。セダムを植えた緑豊かな屋根は、都市の生物多様性を支援し、蜜蜂や丸花蜂の受粉を促進すると共に、空気中の粉塵を捕らえ空気をきれいにし、雨水を蓄えたり、夏場の暑さを和らげたりするなどの効果があるとされる。
 蜂に好まれ、人にも優しい姿の待合所を考案した理由は、蜜蜂を保護しようとする目的が第一にある。蜜蜂の数が世界的に年 々減少している実情を憂慮するからである。
 農薬などが原因とみられる蜜蜂の大量減はオランダでも深刻な問題になっており、オランダ国内に生息する三百五十八種類の蜂のうち五十六 %以上が絶滅危惧種に指定されているそうだ。
 何といっても蜜蜂は、地球の生態系の中で大変重要な役目を果たしている。もし蜜蜂が絶滅するようなことがあれば、声高に叫ばれているように人類も大打撃を受ける可能性が高い。
 「バスを待っていて蜂が飛んできて刺されたら…」との心配もあるかもしれないが、可能なら市街地でも生態系を保つ場所を増やし、その危機的な状況を少しでも忌避しようとする意味では素晴らしい工夫である。
 これまで待合所はバスを待つ人の待機休憩所だったが、蜜蜂たちも気軽に立ち寄れる小さなお花畑にもなったわけだ。
 日本でも生まれてほしい環境対策の発想である。

 

(完)

 

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