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ミツバチと共に90年――

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一冊の本

あさちゃん

 

 ―ミツバチが地球上から姿を消した場合、人類はわずか4年間しか生存できなくなる―
 これが事実なのかどうか、私には知る由がない。ただ、ミツバチのおかげで苦難から生還したことがある。
 中学3年生の秋。高校受験を控え、内申点を高い状態でキープしたかった私は、定期テストに命を懸けていた。
 だが、不得手だった英語のテストで窮地に追いやられた。五十分という時間内では到底訳せないような長文が出題されたのだ。瀕死である。「この大事な時期に人生で初めて零点をとるのか……。」と本気で思った。
 まともに脳が機能していない状態で唯一読めたのは、日本語で書かれた「問い」だけであった。とりあえず目を通すと「ここでは、ある書籍に書かれたミツバチに関する論文である。本文を読み、以下の問いを答えよ。」と記されていた。ミツバチ?その時、私はふとある事を思い出した。そして、覚えている英単語で必死にその長文を読んだ。
 実は数か月前、ミツバチに関する本を読んだことがあった。学校の図書室に入荷されたばかりの本の内の一冊がそれだった。あまりに専門的な内容で、半分も読むことができなかった。その本がミツバチがいかに自然環境と繋がっており、我 々人類にとって必要な存在か、を伝えていることは理解して、静かに本を閉じたのである。
 驚くべきことに、その本の書き出し部分と、テストの英文に書かれている内容が類似しているのである。自力で翻訳することは殆どできなかったが、きっとこの英文は、あの時の本の原文だと信じ、記憶していた内容を頼りに問題を解いた。
 後日返却された解答用紙には、奇跡と思われる八十五点という数字が華 々しく輝いていた。
 あれから十年以上経った今でも、あの英文は、私が読んだ本の原文だったのかは分からない。ただ、ミツバチのおかげで今があると思っている。
 なんてことを、ねっとりした蜂蜜を舐め、紅茶を飲みながら思い出した秋の夜長である。 

 

(完)

 

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