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蜜蜂追いの思い出

渡辺 碧水

 

 「蜂追いのころ」という河方恵子さんのエッセイを読んだ。
 子供のころ、お父さんのお手伝いで、蜂に付けた目印の白い紙切れを追って、野山を駆け巡ったという思い出。蜂の巣を捜し当て、巣穴の蜂の子を採るためだった。お父さんに褒められるのが嬉しかったという。
 私の生まれ育った北海道の故郷では、蜂の子を食べる風習がなかったので、そんな楽しみに満ちた思い出はない。
 これを読んで、ふと思い出したのは、赤クローバーの花蜜と蜜蜂のことである。
 幼い時代は太平洋戦争の末期、七十数年前の話。農村の子供は、おやつ代わりに牧草の花を吸ったり葉を噛んだりして、その汁を味わうのも一つの知恵だった。
 野原には赤クローバー(ムラサキツメクサ、和名はアカツメクサともいう)が咲き誇り、味は濃くはなかったが、花汁は確かに甘かった。子供たちは根気よく赤紫の部分を摘んで、その微量の汁を吸っていた。
 蜜蜂も飛んできてしきりに花蜜を吸っていた。その花蜜を貯めたのが、そく蜂蜜だと思っていた。
 子供の浅知恵だが、仲間で話し合っているうちに、花蜜を集めている蜜蜂を捕まえて蜂の胃をなめれば、少しはまとまった蜂蜜を食べられるのではないかと思い付いた。
 誰かが聞いてきた。
 「蜜蜂は胃に花蜜を貯めて巣に持ち帰る。訪れた花にストロー状の口を差し入れ、花蜜を吸い上げ、専用の胃に貯める。これは非常に伸縮性のある透明なタンク。花蜜が貯まると、風船のように膨らみ、腹部も伸びて大きくなり、体重の半分に相当する量にもなるので、見ればすぐにわかる」。
 早速実行に移した。腹部が大きく膨らんだ蜜蜂を見つけて追い回し、帽子をかぶせて捕らえ、蜜の入った胃を抜き出して食べてみた。
 ところが、いざなめてみると、予想したほど美味しくなく、期待外れだった。大変な努力の結果がこうだ。
 また、悪童仲間は色鮮やかなクローバーを探して、一本一本抜き取って吸う姿に戻った。みんなは勤勉な蜜蜂と競い合うようにして吸った。

 

(完)

 

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