渡辺 碧水
明確に意識されていないものに「蜂蜜色」がある。
例えば、食卓の上に置かれている瓶詰め蜂蜜の絵を描こうとする。描く人は、見る人に、瓶の液体は蜂蜜だと一目でわかってもらいたいとの思いがある。
そこで、色を選ぼうとするとき、絵の具セットから適切な色をすぐに選べるだろうか。実際には、考え込んだり迷ったりして、困惑する人が多いに違いない。
現実の蜂蜜製品は、蜜源植物の花によって実際の色はいろいろである。だから、蜂蜜に決まった色はない、蜂蜜を象徴するイメージ色はない、と思っている人がいても不思議ではない。
このエッセイ集の投稿でも、蜂蜜の色を書いた表現がいくつもある。黄金色、金色、琥珀色、飴色などと形容されている。だが、「蜂蜜色の蜂蜜」という表現はない。蜂蜜色の存在を知っていても、自分のイメージでは「黄金色」などとなるのであろう。
絵を描く場面に戻って、絵の中で蜂蜜を赤、緑、青、黒、白の色を使って表現しようとする人もまたいないのではなかろうか。これらの色の蜂蜜も存在するようなのだが、見る人は蜂蜜と見てくれないだろうから。
同じ描くのなら、蜂蜜らしく、おいしそうに見える色遣いで瓶の液体を描きたい。そこで大いに悩むことになる。
さて、「蜂蜜色」の説明は、国語辞典にはないが、日本の伝統色の中に明確に位置づけられている。
例えば、『和色大辞典』には、日本の伝統色四百六十五の色と十六進数が示されており、「鳥の子色」と「肌色」に挟まれて「蜂蜜色(はちみついろ)」は「♯fddea5」のコードで色見本が明示されている。(同辞典には、別に黄金、金色、琥珀色、飴色もある)
同様に、色見本に加えて、『きもの用語大全』では「淡い赤黄色、また蜂蜜のような色」と、日本塗料工業会の塗料色見本では「ハニー」の名称で「淡い赤黄色の色『黄金色(こがねいろ)』」との説明もある。
現実は多種多様な色が存在するのに、なぜ特定の色が蜂蜜色と決められたのだろうか。せっかく定められた色を、有効活用するためにも、由来や根拠を知りたいと思う。
(完)
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