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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂追いのころ

河方恵子

 

 私の故郷では、「蜂の子」を食べる風習がある。今では、蜂を追う人もいなくなってしまった…皆年老いて、昔話の話題になるくらいだ。
 私も子供の頃、よく父の蜂の巣を捜す手伝いをしたものだ。父の付けた蜂の白い紙切れを追って、野山を駆け巡る。地面に降り立った蜂の姿に巣穴を見つけると、一目散に父に知らせる。
 「よう、見つけたな!でかしたぞ!」
 蜂の子が好きと言うよりも、父に褒めて貰えるのが嬉しくて、いつも後を追っていたのだろう。50年も前の話、息子達には笑い話に聞こえるだろうが、オモチャも遊具も無い時代。身の回りの家畜や、生き物全てが遊び相手であったような気がしている。蜂の子を追うのも、楽しかった思い出の一つだ。

暗い納戸には、一升瓶に入った蜂蜜があった。母の目を盗み、箸で突いて舐めていた。冬になると固まってしまっていたが、菜箸で突っつき口にすると、最初は冷たくて「ジョリジョリ」した食感…やがて、口の中に広がる甘さと、蓮華の花の香り。懐かしい香りの思い出だ。

還暦を迎え、5人の孫を持つ身となった今思う事がある。
一年を通して何でも口にできる時代だ。それに、子供達の周りには、楽しい時間を提供してくれるものが溢れている。
それはとても便利で、有難いことかもしれなが、子供達の記憶に残る味や、香りがあって欲しいと思う。

 「こんなもの、よく食べたね!ウジ虫やんか!信じれん」と言っていた、息子よ。もう忘れたか?
「このメメ(虫)美味しい!」って、ヘボ(蜂の子)飯、頬張っていたことを。

 

(完)

 

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