渡辺 碧水
蜂蜜の国内生産自給率は五 %強にすぎない。大半を輸入品に頼っている。
国産品への安心信仰が強い上に、希少性から値段が高い。業者はブランド化して希少性を一層高め、高価格化に拍車をかける。
一方、豊富な生産量を誇る外国から輸入品がどんどん入ってきて、適値で売られる。消費者は喜ばしいと思う半面、戸惑いも感じる。
二〇一九年六月、ベトナムで問題になったが、ラベル貼り替えなどの生産地偽装も画策される。産地偽装を見抜くのは難しいそうだ。加えて、品質の偽物を見抜くのも、素人には難しい。
高額の国産品の需要が強く、その方が売れるとなると、ずるい業者は外国産を偽装し国産品化して甘い汁を吸おうとする。
例えば、外国産の安い本物の蜂蜜を、国内で飼育している蜜蜂に吸わせて製品化し、国内産の本物の蜂蜜と表示した場合は、真の産地は曖昧になる。
国内に存在しない植物の花粉や不純物などが混じっていれば判定できる。だが、蜂蜜を濾過されたら証拠は残らない。
研究所で、蜂蜜中に含まれる炭素や酸素の安定同位体比を分析すると、採蜜国の判別は可能だそうだが、こんな話になること自体が何か変だ。
一般的に食品の偽装は、巧妙にやれば可能だそうだ。だから、偽装が発覚するのは内部告発がほとんど。
会社ぐるみでやれば、なかなかバレない。二〇一五年八月に摘発された某養蜂園などは十年以上も産地偽装を続けていた。
高価な国産品は高品質(本物)、廉価な輸入品は劣悪品(偽物)と決めてかかる短絡的認識が産地偽装を助長する。ブランド化も偽装を誘発する。
原産国が違えば、国内だって産地が違えば、蜂蜜の成分 ・性状が異なる。製品それぞれに生産地独特の様 々な個性がある訳だ。品質保証は商品の前提であり、生産 ・流通 ・販売業者が行う当然の責務だ。
生産者は品質本位の正直販売、消費者は好みのものを堪能してご満悦。これが勤勉な蜜蜂に敬意を表し、感謝して賞味する人間側の誠意ではなかろうか。
(完)
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