渡辺 碧水
二〇一九年六月、当欄で「はちみつ薬局」と題する興味深いエッセイを読んだ。今日的話題を素材に、自称「時事随筆」を書く私は、投稿者の小林篤来さんに親近感を覚えた。
小林さんの話題を受けて、リレー式に展開してみたい。目薬も興味深いが、虫歯や歯槽膿漏を予防する蜂蜜歯磨きを採り上げる。
私は以前、蜂蜜の歯磨き粉をネットで探してみたことがある。予想どおりに純粋蜂蜜をはじめ、マヌカやプロポリスのものも多く販売されていた。
いっそのこと、就寝前の歯磨きを蜂蜜自体でやれば、口腔内の抗菌も、のどの炎症や風邪の予防にも効果が期待できると思った。
怠け者の私は、横着さを発揮して就寝前に蜂蜜を一匙(さじ)なめることで、歯磨きも不要だと思い付いた。ただ、粘り気と甘さが気になって寝つけず、早 々にやめてしまった。研究が足りなかった。
情報入手過程で知った別の話だが、記憶に残っていたので紹介したい。
蜂蜜の殺菌力や抗菌力は主に、水分を蒸発させた濃縮状態と酸の殺菌効果とによるのだそうだ。ここで紹介するのは後者のこと。
酸性食品といえば、レモンや食酢のような酸っぱいものを思い浮かべる。実は、甘い蜂蜜も有機酸が色 々と含まれていて酸性だ。なめてよく味わうと、甘みの中に酸味が感じとれる。これが蜂蜜の味を奥深いものにしている。
蜂蜜の酸性度はおおよそ三 ・八ペーハー。中性が七 ・〇で、この値より小さいほど酸性度が強い。レモンは二 ・〇~三 ・〇、食酢は二 ・四~三 ・〇であるから、蜂蜜も酸味が強いと言える。
ある蜂蜜業者が外国へ視察に行った際、応対してくれた養蜂業のご主人の歯がボロボロだったそうだ。蜂蜜を食べる機会が多いことによると推測される。蜂蜜の酸性度はセメントも溶かすほどだとか。
これらの説明や例が本当だとの前提に立てば、生半可な知識で蜂蜜の性質も確かめないで安易に行うのは危険なことだとなる。
認知症専門医は「脳の老化を止めたければ、歯を守りなさい」という。迷える老羊は八十一歳である。
(完)
蜂蜜エッセイ一覧 =>
蜂蜜エッセイ
応募要項 =>
Copyright (C) 2011-2024 Suzuki Bee Keeping All Rights Reserved.