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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜たっぷり

あんドーナツ

 

 樺太から引き揚げてきて、山間の村に入植した。金目の物は、全て戦利品として持ち去られ、ほとんど着の身着のままの引き揚げであった。
 「これからは、父さんと母さんりうんと働いて、前のような生活ができるようにするからな! お前たちもしっかい勉強するんだぞ!」
 私と弟を前に、父は決意のほどを示した。

 村が提供してくれた荒れ地を、父と母とで開墾した。私たち兄弟も、日曜日には切り出した木の始末や畦作りを手伝った。開墾が済むと、いよいよ畑作りに取り掛かる。村には農機具を売っている店はなかった。それで、2時間ほど汽車に乗って町まで、父は買い付けに出かけることになった。

 「お前も来るかい?」
 父は私に声をかけてくれた。
 それは願ってもないことだった。引き揚げて来てから、一度も町に出たことはなかった。この機会に、なんでも見てやろうと、心ここにあらずであった。

 午前中に買い付けを済ますと、父は町を案内してくれた。見る物、聞く物がみな珍しかった。
 「昼にしようか?」
 喫茶店なるものに初めて入った。

 「ここは、ホットケーキが旨いぞ!」
 そ言って、父はホットケーキ2個、コーヒーとオレンジジュースを頼んだ。
 母は時 々ご飯の代わりにパンケーキを焼いてくれたが、ホットケーキは初めてだった。でも、なんとなく形が似ている。

 「これに、たっぷりと蜂蜜をかけるんだ。ほら、こうやって!」
 父はまず自分がやってみせた。
 私も負けじと、蜂蜜をたらした。
 「そのポットの分は、みな使っていいんだ。もっと、たらして!」
 なんとも豪快だ。こんなに蜂蜜を使ってお店の人に叱られないかと冷や冷やした。

 

(完)

 

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