渡辺 碧水
以前に、スズメバチ類を避ける目的で開発されたヒット商品、スプレー剤「スズメバチサラバ」に注目し紹介した。その際は、なぜスズメバチを殺し駆除しないのかという基本的理由について言及できなかった。
今回は「スズメバチサラバ」のコンセプトを紹介したい。
よく聞く話のスズメバチは、人の居住圏でも巣を作り、非常に好戦的で、毒性の高い針を持ち、何度も攻撃してくる。襲われると、毒針に刺されて死亡する人も出るほどなので、恐ろしい厄介な害虫である。
また、餌とする昆虫の獲物が減る夏の終わりごろになると、養蜂場の巣箱を襲い、蜜蜂を餌にしようとする。養蜂家にとっても厄介で迷惑な存在だ。
それにもかかわらず、壊滅させないで共存の方途を採るべきだと、商品開発者は言う。
確かに、少なからず人的被害をもたらし、養蜂農家にとっても憎らしい「防除対象害虫」である。
しかし反面、青虫やガの幼虫などの農業害虫を秘かに駆逐してくれる、極めて優れた「益虫」でもある。
スズメバチの存在を、食物連鎖の中心に置いて考えてみる。
この益虫でもあるスズメバチ類を一方的に防除してしまうと、マイナスの連鎖が生み出される。つまり「スズメバチ類の減少→農業害虫の増加→殺虫剤散布の増加→環境汚染→蜜蜂の減少」となる。
これを「スズメバチ類の保護→農業害虫の減少→殺虫剤散布の減少→環境の健全化→蜜蜂の増加」と、プラスの連鎖へ発想の転換を図れば、回り回って、我 々人類にとって快適な世の中になる。
こう考えると、スズメバチ類と人類との共存共栄策の方がより適切だとなる。
被害を受けたことのある人にとって、作業の間ちょっとだけ他の所に行ってもらう、又は、巣箱の蜜蜂ではなく農業害虫を食べに行くよう誘導する「スズメバチサラバ」の噴霧は、消極的で生半可な対処に思えるかもしれない。
それでも、やはり「小さな工夫、大きな貢献」の着想は、未来への夢を託せて素晴らしい。
口コミやメディアで紹介され、商品の良さや考え方が伝わり、愛される逸品になってほしいと願う。
(完)
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