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蜂蜜エッセイ応募作品

一年越しのお見舞い

れんげそう

 

 『お見舞いの品』と書かれた大きな箱が届いた。中身は、きな粉と黒ゴマ粉、そして蜂蜜。
 大病を患い一年間の休職をとった私に、大学生時代の友人が届けてくれたものだ。在学中はさんざんケンカもして、でもどこかお互い似た者同士で憎めなくて…そんな友人。卒業してからも細 々と連絡は取りあっていたが、今回もどこからか事情を聞きつけてくれたようだ。
 「疲れた時、たっぷりのミルクと蜂蜜、好みできな粉か黒ゴマ粉を混ぜてください。温かくして飲むと、気持ちが落ち着きます。」箱の底からはメモが出てきた。
 ところが、あいにく私の病気は免疫力が落ちる類のもの。蜂蜜は口に出来ないのだ。
 「学生時代さんざん喧嘩を売ってきたからな、実はとどめを刺しに来たんじゃないか」そう言ってからかう父を黙らせつつ、せっかくの贈り物を前に腕を組んで悩む。なにしろ食品だ、賞味期限がある。結局、送られてきたものはすべて実家の家族のお腹に収まった。「美味しいな」「これは結構高価な蜂蜜なんじゃないか」ニヤニヤと笑いながらそんな感想を述べる家族に、つい恨みがましい目を向けた。しかし、気落ちした私を励まし、なにくそと奮起させることが狙いだと私にもわかっている。「いいよ、元気になったら私も食べるから!」そう言い返してやり過ごした。
 一年後、無事治療は終了し、私の病気も快復した。
 私はさっそく、きな粉、黒ゴマ粉、そして蜂蜜を購入した。その日の夜、冷蔵庫にあったミルクをマグカップにたっぷり注ぎ、レンジで温める。湯気が立つくらいに温まったことを確認し、蜂蜜ときな粉をひとさじ投入。そうっと口に運ぶと、優しい甘さとともに、何とも言えない温かい気持ちになってくる。
 「ああ、美味しい」一年越しの贈り物だ。あっという間に飲み干し、次は黒ゴマ粉を手に取った。なぜか懐かしい気持ちになる素朴な味。久しぶりに、友人に連絡したくなった。

 

(完)

 

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