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蜂蜜エッセイ応募作品

ニホンミツバチの熱殺蜂球

渡辺 碧水

 

 先日「ニホンミツバチの防衛特技」と題して、テレビ中継の話題を取り上げた。
 その中継の二日後、二〇一九年三月十九日の『山陽新聞』が、岡山県の菓子工房の敷地に巨大オブジェが登場したと報じた。「蒸し殺し」の戦闘場面をリアル再現した精巧な制作品。体長一 ・二メートルのミツバチ三十八体が、一匹のオオスズメバチ(同四 ・七メートル)に立ち向かう様子を表現している。
 ここでは、焦点を「熱殺蜂球」そのものに当て、様子を再現してみたい。
 オオスズメバチは、ニホンミツバチの巣をいきなり集団で襲うことはせず、最初は単独行動で巣の様子を偵察する習性がある。
 ミツバチの巣へ飛来したスズメバチは、巣門の前で停止飛行をしながら、主に帰巣するミツバチを捕らえる。その後、捕らえたミツバチの胸部だけを肉だんご状に丸めて巣へ持ち帰る。
 一方、巣門の前で迎え撃つ三十匹以上のミツバチの門番は、腹部を高く持ち上げて一斉に左右に激しく振る行動を起こす。振身行動で牽制するわけである。スズメバチは一匹に的を絞れなくなり、捕食効率が下がる。
 巣に近づき過ぎたスズメバチは、門番のミツバチにつかまってしまう。次 々と他の門番が突進してくるため、振りほどく間がなく、瞬く間に直径五センチほどの「蜂球」に封じ込められる。
 複数の侵入にも、数百匹が個 々のスズメバチを取り囲んで、見事な連携で堅いスクラムを組む。
 蜂球が形成されると、すぐ内部の温度は急上昇する。腹部の筋肉収縮や飛翔筋を振動させて発熱し、中心部を五十度近くまで上昇させる。
 その原理は驚きである。ミツバチは五十度、スズメバチは四十五〜六度と、わずかに耐熱温度に差がある。蜂球内を四十七~九度に調整すれば、スズメバチを熱死させ、自分たちは生き残れる必勝法を知っていて、ミツバチは難敵を迎え撃つ。
 最初に戻って、菓子工房のオブジェは熱く説く。「ミツバチのように、皆で協力すれば、大きな困難にも立ち向かえる」と。

 

(完)

 

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