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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

W君の想いで

よっちゃん

 

 私は知的障害者支援施設に勤めていました。自閉症や重度障害者の担当でした。年齢的には若く活発な利用者が多く、施設内では大人しく生活する事が困難で、晴天の時は散歩、雨天の時はドライブをしていました。散歩コースも入浴時間等で活動できる時間が違い近距離から遠距離と何種類ものコースに分けていました。施設は山間部にあり、人通りの少ない山道を遠距離コースとしていました。ある散歩の日、山道の脇に養蜂家の木箱が並んでいるのを見つけました。木箱の上にはミツバチが飛んでいた。利用者が興味深そうに木箱のそばに行きたがり、驚いたミツバチに刺されたら危険なので、木箱から遠周りして散歩を続けました。私の班には親のDVで入所をしたW君と言う年齢は成人だけれど気持ちは少年の入居者がいました。彼は無類の虫好きで散歩中「カブト虫」や「バッタ」「カナブン」を摑まえては喜んでいました。他の利用者とは違い言葉も話せ意思疎通も出来て、優しく支援を続けているうちに、私の隣にはいつもW君がいて、父親代わりにいつも私に笑顔で話しかけてくれました、散歩に行く時「ミツバチいるかね?」と私に養蜂の木箱コースに行こうと催促するのです。「ミツバチに刺されると痛いよ」と私が言うと「箱の中に蜂蜜がある?」「見に行きたいと」と駄 々をこねられ「カブト虫の方がいいよ」と私が言っても「ミツバチがいい」と中 々譲りません。結局は安全な山道を散歩しましたが彼は納得がいかない様子。なぜそこまで拘るの?そうだ彼は無類の蜂蜜好き。朝食のパンに蜂蜜の袋が付くと彼は大喜び。「甘い」といつも手を叩き笑顔で喜んでいた。木箱の中にある純粋な蜂蜜を見て見たかったんでしょうね。定年で施設を退職して、現在は他業種に転職しましたが、朝食でパンに蜂蜜を塗るとW君の顔を想いだしてしまう。他の利用者もいるのでミツバチに刺されるリスクを避けそのコースは封印したが、私が職員でいる間に、養蜂家の迷惑も考え木箱の中にある蜂蜜は見せられないけど、なぜ遠くからでももう一度、W君の希望を叶えられなかった事が今更ながらなぜか悔いが残る。

 

(完)

 

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