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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

禁断の蜜

水瀬ちふゆ

 

 「蜂蜜はだめよ。もっと大きくなってから」
 小さな私の手から、母が蜂蜜の瓶を取り上げた。
 「えー、なんで?」
 私は不満げな声を出した。
 「ボツリヌス菌に対する抵抗力がまだないかもしれないでしょう。」
 「大丈夫だよ。」
 「絶対だめ。」
 
 (まったく心配しすぎなんだから。うちのお母さんちょっとカホゴなのよね。)
 心配されて嬉しい気持ちと子ども扱いされて悔しい気持ちが混ざりながら、私は背伸びをして瓶を棚に戻した。
 重い瓶の中に入っている黄金に輝く蜜。私にとってそれはアダムにとっての林檎。禁断の蜜であった。
 
 幼稚園の友達にさりげなく蜂蜜について訊いてみた。
 「ねーあのさ、ハチミツって食べたことある?」
 「あるよ。」
 キョトンとした顔で、さも当然だという風に友達は答えた。
 「ふうん。あるんだ。、、、どんな味?」
 側で聞いていたのだろうか。他の子たちもいきなり話に入ってきた。
 「トロっとしてるんだよねえ。」
 「え、ざらっとしてるよ。」
 「おいしいんだよねー。」
 「あんなのおいしくないよ。」
 意見がバラバラだ。一体蜂蜜といったものはどういう食べ物なんだ。私の妄想は膨らむばかりである。
 
 数年後。私だってずいぶん大きくなった。もうそろそろデビューしてもいいだろうと、母に訊いてみる。
 「蜂蜜食べていい?」
 母は渋い顔をして応えた。
 「アレルギーとか出ないかなあ。」
 やっぱり心配性。私まで心配になってきた。
 そろりそろりと、でも力を込めて瓶の蓋を開ける。
 
 ふわりと広がる、煮詰まった花の香り。
 黄金色の艶ともったりとした重量感。
 恐る恐る口に運ぶ。さあ、どうだ。
 
 「甘い、、、。」
 私は拍子抜けした顔で母を見た。母が笑い出す。
 「そりゃあそうだよ。蜂蜜だもの。」
 禁断の蜜は甘かった。

 

(完)

 

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