のんちゃん
まだ、幼稚園児だったころの忘れられない思い出だ。
78歳になる母は、あの頃からずっと、いわゆる健康オタク。
小さなころのおやつは、熟れかけたくだものと手作りお菓子。
タッパーウェアという、今でも棚に眠っている容器が、わたしのおやつ箱だった。ポテトチップスなんぞは、ごくたまーに、小皿に少 々もってくれた。
あれは寒い冬。
雪深い北国のガス湯沸かし器で焚いたお風呂の時間。
母は、これまた小さなタッパーウェアをひとつ、鏡もない風呂場に置いていた。そのタッパーの蓋をあけて、何やら顔にすりすりしている。
私「なにしてるの?」
母「お顔のまっさーじするの。のんちゃんもやってみる?」
・ ・ ・痛い。じょりじょりして、べとべと。でも何だか、、美味しいような。
いまでも忘れられない、塩入りはちみつだ。
当時の母は、顔がつるつるになるっしょ、とニコニコ顔であのじょりじょりを愛用していたように思う。
わたしのほっぺたは、紅くなって、ちょっとヒリヒリしたんじゃなかったかな。
当時の我が家のはちみつは、大きな銀色の四角い缶入りだった。
毎週日曜の朝には、きまってはちみつをとかした小瓶が食卓テーブルに並ぶ。
そして、座布団みたいな、フライパンい~っぱいの大きなホットケーキが切り分けられるのを待つのである。
そこに、少量のお湯で溶いたはちみつを、ホットケーキがべっしょりなるくらいにかけて食べるのが大好きだった。
私「おかあさん、はちみつ足りないっしょ~」
父も輪をかけてたっぷりかけるので、よく継ぎ足してもらった。
温まったはちみつの香りと独特の甘さが、座布団のようなホットケーキを格別のものにしていたと、小さな食いしん坊の甘い記憶だ。
いまでも、母はマイはちみつを欠かさない。ハンディサイズだが。
60歳離れた孫も、一番好きな飲み物は、はちみつレモン。
さてと、母のはちみつ信仰は、どこまで受け継がれるのかな。。と、ふと思った穏やかな元日だ。
(完)
蜂蜜エッセイ一覧 =>
蜂蜜エッセイ
応募要項 =>
Copyright (C) 2011-2023 Suzuki Bee Keeping All Rights Reserved.