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蜂蜜エッセイ応募作品

子どもは風の子

利賀 雄三

 

 「お母さん、もうすぐハチミツがなくなるよ。買ってきておいてね」毎朝のように、ヨーグルトにたっぷりとハチミツをかけて食べる娘が、妻に向かって大きな声を出す。ベッドの中でその声を聴くと、小学生の頃を思い出し、豊かな時代になったと実感する。
 昭和三十年代、まだ世の中全体が貧しく、小学校を卒業する頃になって、やっと教室にストーブが入った記憶がある。その頃住んでいた名古屋周辺は、冬になると岐阜県と滋賀県境にある伊吹山から吹きおろす伊吹おろしが今より強く、肌を刺すような冷たさだった。それでも冷たい北風の中、刈り取った稲を円錐形に積み上げたイナムラの間で鬼ごっこをしたり、電線のない田んぼの真ん中で凧揚げをしたりして遊んだものだ。
 だが一冬に数回、風邪を引いてしまうことがあった。少し寒気(さむけ)がし始めると、待ち遠しくて仕方ないものがひとつ!それは、母が作ってくれる甘くて温かなハチミツ湯だった。外で遊んでばかりいるからだと、小言を言われることも我慢して、温かいハチミツ湯を作って欲しいと、ねだったものだ。
 普段は、なかなか飲ませてもらえなかった。ある時、どうしてもハチミツ湯が飲みたくて、熱もないのに寒気がすると言ったことがある。
 その私の額に手を当て、
 「今日は寒いから、特別だよ」と笑みを浮かべながら、ハチミツ湯を作ってくれたことがある。私が、大げさに言ったことが分かったのだろう。
 その母も、鬼籍に入って早や五年。
 今でも、寒さが厳しい真冬や少し寒気(さむけ)がする時など、自分自身でハチミツ湯を作ることがある。口に含むと、まだまだ物が少なくて貧しかったが、楽しい子ども時代だったことや、あの時の母の笑顔など、甘さと温かさとともに、懐かしく思い出す。

 

(完)

 

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