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蜂蜜エッセイ応募作品

口内炎になっちゃった

あぽりん

 

 幼い頃、口の中に口内炎がよく出来ていた。
 「また口内炎になっちゃった」
 母にそう言うと、口内炎の個所にはちみつを塗ってくれた。
 我が家には、いつもはちみつがあった。
 「舐めちゃだめだよ。口内炎にははちみつが効くんだから。」
 「うん」
 そう言いながら、口の中に広がる甘くて美味しいはちみつを私はモゴモゴしながら味わった。
 「もう一回」
 母にはちみつの催促をする。
 「まったく~、じゃあもう一回ね」
 母がはちみつを塗ってくれる。
 時 々、口内炎になっていないのに「口内炎になっちゃった」と、嘘をついてまではちみつをせがんだ記憶がある。
 私の嘘を知ってから知らずか、母はスプーンにはちみつをとり、私にくれていた。
 その時のしてやったりの喜びは今も忘れていない。
 
 「口内炎にははちみつが効く」は、母の母、つまり私の祖母から伝わったらしい。
 きっと祖母は祖母の母から伝え聞いたのだろう。
 母はいつも言っていた。
 「昔から口の中のできものには“はちみつが一番”って言われているんだから」
 今だにその信ぴょう性はわからない。
 
 口内炎ではちみつの味を覚えた私は、今もはちみつが大好きだ。
 
 大人になってからの私は口内炎になることもなくなった。
 それでも、頻繁にはちみつをいただいている。
 トーストした食パンにはちみつ、無糖のヨーグルトにはちみつ、スライスしたチーズにはちみつ。
 料理の甘味にはちみつ。
 大量のはちみつはあっと言う間になくなる。
 はちみつにレモンのスライスを付け込んだレモンジュースは我が家の定番だ。
 
 はちみつと聞けば「口内炎」を思い出す。
 それは甘い思い出だ。
 母が塗ってくれた優しい手と、口の中に塗られたはちみつの味の記憶。
 
 お花のおかげ。蜂さんのおかげだね。
 そして母のおかげかな。

 

(完)

 

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