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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

金八お爺さん

三島 裕子

 

キセルの煙草を上手に扱い
囲炉裏のへりで
コンと灰を落とし
またその火玉を使って
次の一服を始める…。
 
母方の祖父は
いつもそんな動作をしていた。
 
私の子供時代は
とっくにガスも電気も普及していたし、
家電製品もほとんど各家庭に揃っていた。
 
そんな中でも
祖父は火を起こし
湯を沸かしていた。
 
山に焚き木ならたくさんあると
 
家にいなければ
裏山の畑に建てた
掘っ立て小屋で
 
やはり同じように
火を起こし
キセルをくわえていたのだ。
 
ある日
遊びに来ていた
孫達を集めて
大事そうに
ガラス瓶を開けた。
 
茶色というより
こげ茶色の液体が
トロリと
祖父の匙から掬われる。
 
嬉しそうに
口に運ぶ祖父。
 
皆がじっと見つめる中
それはとてもとても丁寧に
同じ匙で
エサをねだる
群れた孫達の口に
分け与えられたのだ。
 
 
それは蜂蜜だった。
 
祖父は得意げに話しをする。
 
木のウロ(穴)から採ったのさ。
 
こんな色だから
熊蜂だろうと。
 
大きな身体の熊蜂が
蜂蜜を作らないことを
今の私には理解できる。
 
でも
皆が熊蜂の蜂蜜だと信じるくらい
 
それは素晴らしく甘く
深いもので
 
時 々牛乳に入れてもらえる
薄い黄色の蜂蜜とは
別物で
 
うっとりするくらい
美味しいものだった。
 
たくさんの小さな口は
次を待っていたが
 
祖父はまた
大事そうに蓋を閉め
 
高い戸棚へとしまい込んだ。
 
 
それきり
その蜂蜜には会えなかった。
 
古びた木の戸棚の奥は
まるでそのまま
木のウロのようだ。

 

(完)

 

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