たかぱん
母は93歳。大病もなく、小さな病気もしたことはなく、単調な日 々を送っている。腰が曲がり、歩くのもやっとだが、頭脳は明晰で口も達者である。毎日の流れは単調だが規則正しい。朝夕に仏さんとお稲荷さんにご飯とお茶を捧げ、お線香をあげておりんの音が家中に広がる。昼間には辞書を片手に私たち家族の愚痴日記を書き上げ、寝る間際に牛乳 ・きな粉 ・蜂蜜の混合液をコップに一杯だけ飲み干す。
蜂蜜は国産品で小さな容器に入っている蜂蜜を必ず購入する。小さな容器は大きな容器よりも割高になっているが、何故か大きな容器の蜂蜜は購入しない。どうしてもその理由が知りたくて、尋ねたことがある。すると、次のような回答が返ってきた。
「あんたもばかだね。大きな容器は、蜂蜜がだんだん無くなってくると、容器の中が空気でいっぱいになって、蜂蜜が傷むじゃないか。」
母はどちらかというと無学で貧乏な人生を歩んできたが、自分が大切だと思ったことには、しっかりとお金をかけ、蓋を開けたら、より新鮮な蜂蜜を毎日同じ量ずつ体内に取り入れる良さを理解している。そして93年間生きてきた。
私は一応大卒で母よりは貧乏ではないが、母のようなお金の使い方は身についていないし、毎日同じように継続していることも無く、脱帽である。還暦を過ぎた私はあと十年経つと71歳。103歳になる母は、相変わらず単調な一日の終わりに、牛乳 ・きな粉 ・蜂蜜の混合液をコップ一杯だけ飲み干しているに違いない。
(完)
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