Nami
私が物心ついた頃、家には必ず大きなはちみつの瓶があった。
少し使わない時間があると、蓋ははちみつで固まり、小さい私の手では開けるのに苦労した。
大きなはちみつの瓶を見ると、父がカポッと蓋を開けてくれる音を思い出す。
朝は、マーガリンを塗ったトーストに、はちみつをたらりたらりとたっぷりかけて。
口をべたべたにしながらほおばっていた私。
母は、紅茶に入れて。
父は、そのままスプーンごとなめていたり。
夏は、かき氷にいちごの氷みつをかけた後、はちみつをたらりたら~り。
スプーンから、とろりとろ~りとゆっくり落ちる琥珀色のはちみつ。
その時間が、早くかき氷を食べたい私には待ち長かった。
父が作ってくれるかき氷は、とっても甘くて、とっても美味しかった。
そこには、家族みんなの笑顔が必ずあった。
母が亡くなり、父が病気で施設に入った今。
大きなはちみつの瓶を見ると、当時の幸せだった記憶を思い出し懐かしくもあり、せつなくもなる ・ ・ ・
今、我が家にあるはちみつは、そんな大きな瓶ではないけれど蓋を開けてと娘が持ってくる。
娘も、はちみつトーストが大好きだ。
来年の夏は、父が家へ帰ってきた時に、あのあま~いかき氷を作ってあげよう。
娘は、はちみつ入りのかき氷を食べた事はないけれど。
私には、父と娘の笑顔がもう浮かぶ。
(完)
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