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蜂蜜エッセイ応募作品

はちみつおぶー

関野あい

 

 小さい頃、肌寒い季節に風邪を引くと、いつも母は『はちみつおぶー』を作ってくれた。
 熱でだるくて、無性に甘えたくて。いつもより優しくしてくれる母が、枕元まで持ってきてくれるそれは、はちみつの甘さとレモンの酸味とほかほかの湯気とで、本当に特別な味だった。
 母に甘えることもなくなった社会人3年目の秋、私はひどい風邪を引いた。
 ボーッとした頭で、ふと(はちみつおぶー、飲みたい)と思い、掃除機をかけている母に近寄り、『はちみつとレモンある?』と聞いた。
 本当は作ってもらいたかったが、素直になれなかった。
 母は床の埃を吸いながら「うん、台所にあるよ」と事も無げに言った。
 「どうやって作るの?」
 『作って』とは言えず、わかりきったことを聞く私。
 「はちみつとレモンの絞り汁を、お湯で溶くんだよ。」
 と忙しそうな母。
 昔のように優しくいたわってくれないことに、妙に悲しくなって、「ふぅん、まぁいいや」と部屋に帰り、寝転んだ。
 風邪は自己責任。もう小さい頃のように心配もしてもらえないんだと切なくなっていると、掃除機の音が止み、母が私の部屋に顔を出した。
 「飲まないの?」
 「うん。」
 「そっか、お大事にー」
 パタン。行ってしまった。
 とっさに起き上がって、ドアを開け、母に近寄り
 「ねぇねぇ、お母さんの作ったはちみつおぶーが飲みたいの。」
 と言いながら、なんだか恥ずかしくてにやにやすると、母も「なんだぁ」と言いながらにやにやして、「ちょっと待っててね。」と掃除機を置いて、湯を沸かし始めた。
 母の作ったはちみつおぶーを飲みながら、社会人になって生意気な態度を取っていたことを心の中で謝り、その日から少しずつ、母の言うことを素直に聞こうと心がけるようになった。
 
 あれから6年。
 私はもうすぐ母になる。
 子どもが産まれて、はちみつが飲めるようになったら、寒い日には一緒にはちみつおぶーを飲んで暖まりたい。

 

(完)

 

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