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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

因島にて

リマ

 

 京都在住で六十才代の女性〇さんは染色デザイナーで、広島県の因島に仕事場を持っている。もう半世紀以上のつき合いだ。
 二十数年前、小学生だった二人の息子を連れて、夏休みに遊び行ったことがある。広い庭に染めた布を干している初めて見る光景に、きょとんとしていた。
 風が吹くたびに、手描きの柄が浮き立って、幅広くて長い布が堂 々と揺れている。振り返ると海岸が見えていて、沖合ではタンカーやフエリーが行き交い、のんびりと癒される。
 でも息子達は退屈なようで、〇さんが、「布に何か描いてみる?」小さな白生地を渡してくれたけれど、あまり乗り気ではなさそうだった。
 どうやら、庭に登場した二匹の猫が気になるようで、猫の相手をするのに夢中だ。〇さんが年に数回、仕事場に来ると、どこからともなく、ちゃんと訪ねてくるという。
 日差しが強いというのに、息子達は平気な顔で、汗だくになり戯れた。さすがに夜は熟睡したようだったけれど、早朝に起きてきて顔も洗わず、二人で猫を追いかけていた。
 朝食に、〇さんがトーストにバターを塗りながら、ガラス瓶に入った蜂蜜を見せた。
 「これを上にかけて、またトーストすると美味しいよ」
 因島特産のミカン蜂蜜だ。言われた通りにしてみると、何とも言えない柑橘系の甘さが口に広がった。
 息子達は同時に〇さんに言った。
 「もう一枚、食べたい!」 
 おかわりしたパンを皿ごと庭に持ち出して、猫とモーニングを味わっていた。
 帰り支度が終わる頃、息子たちがいない。別れの挨拶をしょうと猫を探していたようだ。〇さんが笑みを浮かべて猫の方が疲れたかな?隠れたかもね?」今でもミカン蜂蜜を口にすると、無邪気な息子達と二匹の猫が頭に浮かんでくる。

 

(完)

 

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