中家ふき子
母が亡くなったのは、姉が8歳、私が5歳の時。父は半年後に再婚して、腹違いの妹が二人生まれた。継母とは当然のように折り合いが悪く、親に甘えられたのは母が亡くなる数年間だったはず。その当時、姉と私は二人して百日咳にかかったことがあったらしい。母は私達のために、蜂蜜大根を作ってくれた。私は蜂蜜のトロリとした美味しいところ、姉は皺になった硬い大根をいつまでも噛んでいなければならなかったと、悔しそうに話した。その話を聞いたのは、つい数年前のこと。居心地の悪い故郷を捨て、結婚を反対され、勘当され、肉親の愛情を知らないで育った記憶が帳消しになったような気がした。愛情を独り占めにできた頃が、私にも確実にあったのだった。
(完)
蜂蜜エッセイ一覧 =>
蜂蜜エッセイ
応募要項 =>
Copyright (C) 2011-2024 Suzuki Bee Keeping All Rights Reserved.