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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

『一〇 %の希望』

影法師

 

 かれこれ十年近く、原因不明の胃腸疾患と闘病を続けている。その間、胃腸の調子を崩すと絶食に切り替え、2~3週間ほど様子を見ながら食事量を戻してゆく。激しい下痢の痛みと絶食の繰り返し…。いつの間にか身体は痩せ細り、寝たきりとなってしまった。
 食べられない時期は本当に辛い。いつまた痛みが来るかも予知できないし、絶食や白粥になると「またか…。一体いつになったら良くなるのだろうか…」という気持ちに心が覆われてしまう。
 
 そんな時、出会ったのが蜂蜜だった。「少しでも栄養を」と、家族がプレゼントしてくれた。胃腸を崩し、絶食を経て白粥になった時、小さなスプーンで一杯の蜂蜜を舐める。栄養のために食べてみただけだったが、意外にもたまらなく美味しかった。
 普段からパンやヨーグルトに蜂蜜を好んで使うのだが、それとはまた違う美味しさがあった。絶食している分、舌が敏感になっているのだろう。蜂蜜の豊潤な甘みと、上品な花の香りが口いっぱいに広がり、蜂が元気に蜜を運んでいるイメージまでもが浮かんできた。身体が弱っているからこそ実感した気づきだった。
 
 長い闘いは今日も続いている。調子を崩し、白粥になるとやっぱり嫌になる。9割は絶望と虚しさで心がいっぱいだ。だが、そんな時でも1割は救いが残る。それが、蜂蜜を食す楽しみなのだ。一食一回、小さなスプーンで口に運ぶ蜂蜜が、今では私を支える幸せの一杯となっている。

 

(完)

 

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