一柳博之
幼い頃、私は紅茶が好きだった。初めて飲んだ時、世の中にこんな美味しい飲み物があるのかと感動したものだ。それは缶に入った葉で煎れるもので確か「セイロンティー」だったと思う。それ以来、私は紅茶が飲めるたびに嬉しくて仕方なかった。ある日のこと、母のスプーンには蜂蜜が乗っている。「これ入れて飲んでごらん。美味しいから」。そう言ってカップに入れてくれた。それまで紅茶には砂糖しか入れたことがなかった私は、最初は疑心暗鬼だった。しかしよくかき混ぜて飲んでみると、まるで夢のような味が口中に広がった。まさに紅茶と蜂蜜が奏でる美しいハーモニー。ただでさえ美味しい紅茶がこんなにもさらに美味しくなるものなのか。私にとって蜂蜜との出会いはそんな衝撃的なものだったのである。私はいつだって蜂蜜ティーが飲みたかったが、母に「何回もは駄目よ」と言われ、それは叶わなかった。それ以来私にとって蜂蜜は特別なもので、頻繁には食べられないものだと自覚している。一生に一度の蜂蜜ティーの味。それは今でも忘れられない。
(完)
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