幾井良子
私は母に時 々荷物を送っていた。遠く離れて何もしてやれないので何かしらおいしいものやきれいなものを取り混ぜ、何日も楽しめるようにしていたのだ。
ある時箱にすき間があったので買い置きのはちみつキャンディを入れた。普通にスーパーで売られているものだ。
数日経って……母は風邪で寝込んでいて何日も食事ができなかったとわかった。荷物をやっと開け、ひたすらはちみつキャンディでしのいだ、と……それから必ず荷物にいろいろなはちみつグッズを入れるようになったのは言うまでもない。
ところが……母は母で「よそからもらったから」と大きいはちみつのビン詰めを送ってくるようになった。「自分で食べればいいのに」と言っても送ってくる。今思うにビンの蓋が開け辛く、気軽に食べられるキャンディの方が良かったのかもしれない。老いを実感していなかった私は変に思いながらもさてどうしたものかと考えた。そして合理的な方法を実行した。半分はバタートーストにかけておいしくいただく。ビンにすき間ができたところで青梅を入れて梅シロップにするのだ。
ほんのちょっとの手間で味も香りも素晴らしいシロップができあがる。ヨーグルトにかけてもいいし、飲み物にしてもいい。初夏になると青梅とはちみつの確保につとめる主婦の鑑みたいになるのだ。
お母さん、もう互いに送り合うことは永遠にできなくなったけれど、私の「行事」は続いているよ。去年は梅をいろいろな店でわざと違う品種で買ってみた。結局4キロ漬けたんだから。今年はどうしようかな……
(完)
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