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蜂蜜エッセイ応募作品

父のハチミツ

小田 茂

 

 今年九十歳になる父は、野菜作りの合間に〈蜂の巣箱〉を、何ヵ所かに置いて、自家製のハチミツを採取するのである。
 本業を退職した父は、それまでの兼業農家から専業農家になった。と言っても、本格的な大農家ではなく、一人で細 々と米作りと野菜作りである。
 畑の片隅に四角い箱を置き、暇をみては箱を確認にゆく。箱の下側には、働き蜂が忙しそうに出入りしている。
 たまに実家へ帰ると、時には女王蜂の逃走劇にも遭遇する。
 「おい、手伝え」
 と、父のことば。
 女王蜂の捜索である。
 箱を起点にして、周りの木 々等を確認してゆく。女王蜂が木に止まると、そこに働き蜂が集まり、黒色になった一つの集団ができている。
 その女王蜂を元の巣に返すために、父の蜂との格闘が始まるのである。
 女王蜂が巣に帰れば、また働き蜂たちも戻って来るのであり、何となく、蜂の習性と人間社会が重なるのである。
 父は、今までに蜂から、一体何ヵ所刺されたのだろうか。
 父の痛みと引き換えにして採取されたハチミツ。そして、定期的に父が自慢げに届ける百 %純粋のハチミツ。
 その栄養満点のハチミツは、私の朝食のパンと一緒に並ぶのである。
 楽しんでいるような父に、「もうそろそろ歳も歳だから、蜂との格闘も辞めたら」とは言えないでいる私である。
 最近、自動車運転免許証を返納した父であるが、父は父なりの〔時期〕を持っているのであろう。
 その時期は、父が一番知っているのであろう。

 

(完)

 

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