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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂のOJT

ふなえ

 

 私は自宅で蜂のインストラクターとして訓練生を送り出した。訓練生である蜂の赤ちゃんは、ある日突然私の家に迷いこんできた。つんつんしても一向に怖がらなかった為、危機意識の醸成から始めた。飛び方は教えられないので、部屋の中にある植木の葉っぱに載せ、自己学習してもらった。訓練生は葉っぱの端っこに立ち、前足をものすごい勢いで動かしながら、何度も何度も飛ぼうとした。時間がかかりそうだったので部屋の中で他のことをしていると、突然、ぶん、と音がした。「お、飛んだか!」と見てみると、訓練生は植木鉢の近くでひっくり返っていて、足をバタバタしていた。私は鉛筆を取り出し、さきっちょに載せては落とす、を何回も繰り返し、その度に落とす高さを高くしていった。回数を重ねる毎に飛べる時間が長くなった。そしてもう大丈夫、と判断したところで、私は鉛筆をもってベランダに出た。訓練生は鉛筆の先にぎゅっとつかまっていた。私はベランダの柵の外まで手を出したところで、えいっ、と鉛筆をたたいて訓練生を落とした。訓練生は一度も失速することなく、遠くまで飛んで行き、すぐに見えなくなった。嬉しさと寂しさで胸がいっぱいになった。

 数日後、別の種類の蜂が私の前に現れた。今回は赤ちゃんではなく大人の蜂だった。いわく、長いこと家の中から出られないでいるので、外に飛んで行きたいと。私はベランダの窓を開けて「はい、どうぞ」と言ったが蜂は一向に外に出て行こうとせず、天井の壁でもじもじしていた。それならばと、OJTの時に使った鉛筆の先っちょを天井の壁につけてみた。もじもじ君は天井の壁から鉛筆の先にゆっくりと移動した。この前の訓練生より明らかにでかい。立派な成人だ。甘えてるなと思ったが、モチベーションが下がるのもな、と思い、この前と同様鉛筆に載せたままベランダまで持って行った。ベランダにあるサンダルを履く時につまずいてしまい、私は危うく鉛筆を落としそうになったが、もじもじ君は逆さまになりながらも鉛筆にぶら下がるようにしっかりとしがみついていた。私は体勢を整え、ベランダの柵の外まで鉛筆を持って行き、跳べ!と言って鉛筆をはじいた。もじもじ君は見事な線を描きながら飛んで行った。これだけ立て続けにサポートしたら、いつの日か蜂の使いがお礼です、と言ってはちみつを持って来てくれるんじゃないか、とよこしまな考えが頭をよぎった。

 更に1週間後、家に遊びにきた友人にそのことを話した。友人はとてもびっくりしていた。理由を聞くと、その友人が家を出る時、私へのおみやげにはちみつを持ってこようとしたが、重たいから断念した、というのだ。私もとても驚いた。蜂の使いが私の友人にテレパシーを送ったに違いない。けれども私はよこしまな人間で見返りを求めたから、あと一歩のところではちみつをもらうことは出来なかった。翌日私は自分ではちみつを買いに行った。

 

(完)

 

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