ゆりえってぃー
はちみつは味も大好きだが、匂いがそれ以上に大好きである。そして、はちみつの匂いと言って真っ先に脳裏に浮かぶのは今から十五年前の記憶だ。小学校1年の頃に祖母と父と3人で行った夢の国の匂いである。当初、母と妹が来る予定だったのだが、妹の風邪によって2人の代わりに祖母が一緒に来てくれることとなった。祖母は当時七十五歳。朝から晩まで私は存分に楽しませてもらったが、祖母は少しでも楽しいと思ってくれたのだろうか、ということをはちみつの匂いを嗅ぐ度に思っていた。私には幸せな思い出であるからこそ気になっていた。祖母はこの前の誕生日で九〇歳となった。私は当時の思い出を聞いてみた。「怖い乗り物に乗ったのは覚えてるよ。」祖母ははちみつのことは何ら印象には留めていなかったようだ。ちょっとだけがっかりした。話は変わるが、私はヨーグルトには必ずはちみつを入れる。それもたっぷりと。「入れすぎなんじゃない?」よく祖母に注意される。その一方で私が風邪気味になると「はちみつをたっぷり舐めなさい。これでもかっていうぐらいね。」と言う。また、私はポップス、祖母は演歌とジャンルは違うが歌うことが好きな二人にとってはちみつはお守りである。祖母は「はちみつを見るだけであなたに買っていこうと思うのよね。たっぷり使っちゃうでしょ。」と言う。ふと気付いて、とんでもなく嬉しくなった。私がはちみつの匂いを嗅げば祖母を思い出すし、祖母がはちみつを見れば私を思い出すのだ。はちみつは一番大切な人を連想させる力を持っているのかもしれない。ならば、はちみつから連想できるような大事な人がだんだん増えていく人生でありたい、なんてちょっと格好良いことも考えたりする。まあとりあえず、はちみつを舐めよう。
(完)
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