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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

萱の中の甘い蜜

吉木克枝

 

 近所の男の子が、美味しい蜂蜜があるとこを知っているので、取りに行こうと誘いました。場所は、いつも遊んでいる土手でした。川原に生えた萱が刈り取られて、その萱が塔になって立っていたのです。男の子と私は、その萱の塔に入りました。男の子は、切り口が見える短めの萱を一本ぬき、ぬいた萱をたてに裂きます。何も入っていませんでした。「おかしいなぁ」「ちぇっ」何本か同じように繰り返しましたが、蜂蜜を見つけることができませんでした。寒くなって、心細くって一緒に帰りました。 
 男の子は、年上の男子と一緒に遊んでいて、萱の中の蜂蜜摂りを覚えたようでした。
 村は、ほとんどが農家です。どの家も柿の木が植えられていました。どこの家の柿がおいしいか、どの子も知っています。だまって取ってきても、叱られない家も知っています。渋柿でしたが大きくて、筆のあたまのような形の柿は、萱が横に積まれた中に甘くなるまでもぐして(押し込む)置くのです。
 大事にしていた柿が、なくなってしまいました。男の子と一緒でした。悲しくて、がっかりしました。誰が持っていってしまったか、分からないので文句は言えません。
 男の子は、いつかやったように、萱を抜いては、横に裂き、何本も何本も繰り返しました。「あっ」「あった、あった」見事に並んだ白っぽい玉。薬のような楕円形です。二人で、ひとつなめました。なんと美味しかったことでしょう。今でも私は、あの時の感動は忘れていません。それから、その蜂蜜の玉に、二度とお目にかかったこともありません。 
 蜂蜜はどろりとしています。家にも蜂蜜が隠されていました。母は縁の下にしまっていました。必要な時にだけ出して食べさせてくれました。それだけ、蜂蜜は貴重でした。
 白っぽい玉、本当に食べたんです。なんだったんだろう?夢だったのだろうか?今でも不思議に思っています。

 

(完)

 

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