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蜂蜜エッセイ応募作品

マヌカハニーの季節に

星明里

 

 友人は当然のようにザックで行くと言い、私は少し驚いたけれど、自然あふれるニュージーランドを巡るにはそれが自然に思えてきて、友人に倣うことにした。二十代の頃には二十年後も変わらずバックパッカーの旅をする私を思いもしなかった。宿に着くとドミトリーの二段ベッドに荷物を下ろし、さっそく食糧の買い出しへ。広い共同キッチンは様 々な国からやって来た若者たちで賑かだ。さて何を作ろうか。私たちは音楽の流れる通りを抜けて、スーパー目指して歩いて行った。
 ニュージーランドは自然派の食品が多い。無糖のピーナッツバターや発酵食品のベジマイト、甘味の薄いチョコなどがお店に並ぶ。そして多種類のマヌカハニーが棚の一画を大きく占めていた。昔、健康に良いからとお土産に頂いた、薬草の匂いがする蜂蜜を思い出して小瓶を一つレジ籠に入れた。それから小ぶりの、赤や青林檎はみずみずしくて、旅の道中に湖岸で、森林で、アルプスを眺めながら、色 々な場所で齧ることになった。
 その日マウントクック村は明け方からの雨が昼すぎになってようやく上がり、私たちは宿の近くにあるレッド ・タール ・トラックを歩くことにした。村の標高は八〇〇m。そこから三〇〇m上がった尾根に池があり、池の中に生えている水草が赤いという。かなり急な山道で少し上がっては立ち止まる。その度に眼下の村の屋根はどんどん小さくなってゆき、目の高さには隣りの山脈の岩肌が迫ってきた。時おり氷河からの強い風に吹かれて帽子が飛びそうになるが、寒くはない。山道を曲がると、突然白い花をびっしり付けた茂みがあらわれた。近づくとその花の一つ一つはとても小さい。それは蜂蜜のラベルで見たマヌカの花だった。その周りを小さなハナアブが飛び回り、せっせと蜜を集めていた。マヌカはひと月の花期という。きっと花が咲いていなければマヌカとは気付かず通り過ぎてしまっただろう。
 白いマヌカの花の咲いていたあの道をいまも時 々思い出す。

 

(完)

 

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