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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

琥珀色の恵み

西牧 成子

 

 「先生、僕らのはちみつ、今年も是非味わって下さい」
 「アカシア祭」(文化祭)のその日、理科部の生徒たちが、自信に満ちた笑顔で、職員室に宣伝に来た。
 「売り切れないうちに行かなくちゃ!」
 慌てて席を立つ数名の先生に混じり、私もいそいそと職員室を出る。
 お化け屋敷、ダンス、カフェ、ものまね大会など、高校生の熱いエネルギーが発散される賑やかな会場を通過して、一目散に目的地へ。窓ガラスに「理科部」とペイントされた教室に辿り着く。飾りの無い空間に、静寂が漂う。しかし、中を覗くと、なんと長蛇の列。 生徒、保護者、見学者、教職員……。先頭には、白布で覆われたテーブルがあって、その上に小さな瓶がズラリと並んでいる。
 「今年も大人気ですね。こちらの生徒さんのはちみつ、とっても美味しくて、我が家の九十になるばあちゃんは、毎朝ひとさじ舐めてお茶を飲み、『極楽、極楽』って、嬉しそうに言うんですよ。はちみつは長寿の妙薬ね」
 隣りに並ぶ中年の女性が、話しかけてくる。
 「すみませーん。お一人様一個でお願いしまーす」。
 前の方から、元気が良くて真っ直ぐな、生徒の声が響く。彼らは毎日、校舎の屋上に設置したミツバチの巣箱を見守ってきた。せっせと働くハチたちが、花 々から集蜜し、そこで熟成していく姿を、つぶさに観察してきた。やがて、蜜を取り出す作業を経て、今、私たちに、素敵な「恵み」を届けてくれている。
 完売後、部長が、ふっと溜息まじりに言った。
 「先生ご存じでした?一匹のハチが一生の間に集めるはちみつの量って、小さじ一杯なんだそうです」。
 小さな瓶から、小さなスプーンで、ひとすくい。琥珀色のしずくが口の中に広がる幸せ。

 

(完)

 

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