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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

津に愛される蜂蜜まんじゅう

原崎

 

「ちょっと待って蜂蜜まんじゅう買うから!」

三重県津市に転勤して数年経ったある日のこと。

先輩が社用車を停めて一件の店へ風のように走っていった。

聞き慣れない「蜂蜜まんじゅう」という言葉に困惑して待つこと数分。

先輩は手に小さな袋を二つ持って帰ってきた。

「ほら、熱いうちに食べな」

渡された紙の袋を覗けば、ふんわりと甘い香りがする。

中には今川焼のような生地の、丸い小さな饅頭が二つ。

先輩にお礼を言って、きつね色に焼かれた生地をかじると中にはアツアツのこしあんが詰まっていた。でも、口の中に広がるのはあんこの香りよりもっと柔らかく、優しい甘い香りだ。

名前の通り、蜂蜜が入っているのだろう。

先輩も「熱っ!」と言いながら出来たての蜂蜜まんじゅうを頬張った。

「先輩、これ美味しいです!蜂蜜まんじゅうって言うんですか?」
「え、あんた蜂蜜まんじゅう知らんの?津に引っ越してきたからにはこれを食べなきゃ!」

先輩は、この蜂蜜まん本舗の蜂蜜まんじゅうは津で知らぬ者はいないソウルフードで、値段もお手頃なのにとても美味しいおやつなのだと力説した。

車の窓からもう一度店の様子を伺えば、何人もの人が次から次へと入って行き、ホクホクした顔で店から出てくる。

「友達がこっちに遊びに来たら、食べさせてあげなよ」

そう勧めてくれた先輩に頷きながら、私は何だかくすぐったいような気持ちになった。

実家から遠く離れた土地にやって来てずいぶん経つが、津の人が愛するおやつを知ることで、一歩、この地の人たちの心へ近づけたような気がしたのだ。

津の人々は、穏やかで、口調も優しいが、根はとても働き者で家族思いで近所の人々との繋がりを大切にしてる。

ふんわりした生地の中にあるアツアツに詰まったあんこ。そして、やさしい甘さの蜂蜜。

私は、もし津の人たちの心を形にしたら、きっと蜂蜜まんじゅうのような形をしていると思うのだ。

先日、私の妹が遠路はるばる津に遊びにやってきた。

あちこちドライブした帰り道、私は一件の店の前に車を停める。

「ちょっと待って!蜂蜜まんじゅう買うから!」

いつの日か、先輩がそうしてくれたように私も店へと駆け込んだ。

(完)

 

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