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蜂蜜エッセイ応募作品

昭和の祖父と蜂蜜

祖鞍 あいこ

 

鎌倉の、祖父母のお墓のあるお寺に行く途中の道に、蜂蜜屋さんがあった。どことなく祖父に似た感じの御店主が、お店番をしていて、アカシア、レンゲ、桜、ミカンなどの種類の蜂蜜を量り売りしてくれる昭和レトロな雰囲気の漂う風格のあるお店で、お墓参りの時には立ち寄るのを楽しみにしていた。

最近(と言っても5年くらい前だろうか)、そのお店が雑貨屋になった。手作りアクセサリーや、刺繍小物などを扱うおしゃれなお店で、それはそれで楽しいが、少し寂しかった。

先日、そこへ寄った時、店内に「蜂蜜あります」との貼り紙を見かけて嬉しくなった。

いつも買っていた、お気に入りの「コーヒーの蜂蜜」を雑貨屋の店主と思われる女性に頼んで店内を見ていた。すると、あの蜂蜜屋のおじいさんが、隣からコーヒーの蜂蜜を持ってやって来てくれた。包装袋のミツバチマーヤのようなイラストも変わりなく、ますます嬉しくなった。

そのコーヒー風味の蜂蜜を、朝食の時、バタートーストに付けたり、落ち着かない夜に、ホットミルクに入れたりするのが幸せで、ホッコリした気持ちになる。

祖父は戦争で東南アジアや中国、台湾に遠征に行っていたときく。口数の少ない人で、戦争の話は一切しなかった。口に出来ないほどの苦労があったのだろう。そんな祖父が、戦争中食べ物が無くて、たんぱく源として、蛇を食べた話や蜂の子を食べた話をしてくれたことがあった。特に蜂の子はとても美味しく、贅沢品だったということも言っていた。

子供だった私は「ゲテモノ食いなおじいちゃんだなぁ」としか思わなかったが、今となっては蛇はともかく蜂の子は美味しいと聞くので、戦中という苦労の最中でもそんな楽しみを見つけていたのかなぁと思う。

鎌倉の蜂蜜屋さんは看板は無くなったが、今も健在で祖父を思う架け橋になっている。夜、ホットミルクを飲みながらそんなことをしみじみ思う。

私にとって蜂蜜は昭和の温かい貴重な甘さで、今となっては少し切なくなる。日本蜜蜂も大幅に減少していて、蜂蜜はますます高価になるのでその気持ちはなおさらだ。

貴重な蜂蜜わ明日の朝も大切にいただこう!

(完)

 

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