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蜂蜜エッセイ応募作品

砂漠の深き甘露:アラブで邂逅した再生の蜜

戸成一翔

 

アラブ首長国連邦(UAE)で開催されていた国際会議は私にとって、日本のユース代表としての誇りと、異文化の熱気が交錯する舞台だった。しかし、十日間の長丁場、連日の緊張と時差ボケは容赦なく、わずか三日目の昼には、私の身体は鉛のように重く、疲労困憊していた。

逃げるように会場を抜け出し、向かったのは近場のスーク(市場)だ。スパイスと織物のエキゾチックな香りが満ちる迷路のような通路で、ふと、黄金色の瓶が並ぶ蜂蜜屋に吸い寄せられた。憔悴しきった私を見抜いたのだろう、顔立ちの濃いアラブ人の店員は、流暢な英語で一つの瓶を熱心に勧めてきた。

「疲れてるようだね。これは特別だ。一日の適量は一舐めだけだよ」

それは「パワー・ハニー」なる薬草入りの蜂蜜。日本円で六千円という高額、しかし店員の「特別」という言葉に、一抹の不安と、何かにすがりたい気持ちが交錯した。これは怪しい薬か、それともこの国の知恵が凝縮された秘薬か。逡巡しつつも、私はこの謎めいた黄金を購入した。

ホテルに戻り、恐る恐るスプーンの先に少量を取り、舌に運ぶ。

まず、薬草の独特な苦みが鼻腔を抜けた。それは、国際会議の重圧、そして蓄積された疲労という、異国の地で奮闘する私の『今』を映した味のように感じられた。

しかし、その直後、蜂蜜の濃厚で重厚な甘みが全てを包み込む。それは単なる甘味ではなく、大地のエネルギーを凝縮した、力強い味わいだった。この深い甘みこそが、私に与えられた未来への活力だと直感した。

すると、不思議なことに、身体は急速に休息を求め始めた。耐え難い眠気に襲われ、ベッドに倒れ込む。わずか一時間、深く、深く、眠りに落ちた。

目覚めたときの変化は、まさに驚愕だった。一時間の休息とは思えないほど熟睡できていたのだ。身体中の倦怠感が一掃され、まるで長年溜まっていた毒素が抜け出て、細胞一つ一つが新しく生まれ変わったかのよう。全身に活力がみなぎり、頭は冴えわたっていた。窓の外では、太陽の光を浴びたペルシャ湾が青く美しく輝いている。

あの「パワー・ハニー」は、疲弊した私に、自然がそっと授けてくれた「再生の秘薬」だった。蜂蜜の一滴がもたらした驚くべき回復力は、私の心に「もうひと頑張りしよう」という力強いエールを吹き込んでくれた。

この蜂蜜は、世界を駆け巡る私の旅の、力強い源泉となっている。

(完)

 

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