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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜から学ぶ相互理解

しき

静かに台所へ向かった。私は忍者だ。足音を殺して棚を開け、目的のものを探す。あった! こはく色に光る蜂蜜の瓶。両手でそっとつかみ、息を止めてふたをひねる。

「あ、ダメじゃん!」

突然、背後から声がした。振り向くと、兄があきれ顔で立っていた。「お母さんに言わないで!」と必死で頼むと、彼は笑い、「しょうがないなあ」と私の隣にしゃがみこむ。ふたりでスプーンを取り合いながら蜂蜜を味わっていると、瓶が後ろからスッと持ち上げられた。そこには腕を組むお母さん。私たちはそろって肩を落とし、次の瞬間、顔を見合わせて吹き出した。

蜂蜜は、昔から私の大好物だ。中学三年生の今も、ほぼ毎日のように口にしている。ここでは、蜂蜜が私に教えてくれた「相互理解のセオリー」について綴りたい。

蜂蜜は、パンに塗ればおいしい朝ごはんになり、冬に食べれば乾燥した喉にうるおいを与えてくれる。ヨーグルトにも、お菓子にも、煮物にも合う。使い方が変われば味わいも役割も変わるが、どれもまぎれもなく蜂蜜だ。

世界に目を向ければ、その多様さはさらに広がる。

フランスには、フロマージュ・エ・ミエルと呼ばれる食べ方がある。くせのあるチーズに蜂蜜をとろりとかけ、塩味と甘味の対比を楽しむ前菜だ。トルコではバクラヴァが人気だ。バターを重ねて薄く焼いた生地にピスタチオなどのナッツを挟み、蜂蜜やシロップを染み込ませた伝統菓子で、祝祭の席では欠かせないそうだ。中東のハルワは、穀物やゴマ、豆などを砂糖や油脂で煮詰めて作る濃厚な甘い菓子で、そこに蜂蜜を加えると華やかな香りが生まれる。

国が違えば使われる材料や楽しみ方は驚くほど異なるのに、人々はそれらを同じ「蜂蜜」と呼ぶ。そのことに気づいたとき、ふと思った。人もきっと、蜂蜜と同じなのではないだろうか。

私たちは見た目や話す言葉が違っても、根底にある感情は大きく変わらない。嬉しいときは笑い、悲しいときは涙を流し、優しさを受け取れば心があたたかくなる。
蜂蜜がどんな料理に姿を変えても蜂蜜であるように、人もどんな背景を持っていても「人」であることに変わりはない。このことを念頭において他者と接すれば、互いの違いを尊重し合いながら共生していける。さらに、違いを知ることで、自国の文化や自分の特性についての理解を深められる。

この事実に—「相互理解のセオリー」に気づかせてくれた蜂蜜は、やはり偉大なのである。

(完)

 

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