ストカ
季節の変わり目になると、決まって喉から不調が始まる。
ある朝、目が覚めた瞬間に感じた違和感は、嫌な予感そのものだった。
唾を飲み込むと少し引っかかる。痛みとまではいかないが、これまで何度も経験してきた風邪の入り口だと、身体が教えてくれていた。
仕事柄、人とコミュニケーションを取ることが多い。
ひどくなる前に何か手を打たなければと思い、ふと思い出したのがマヌカハニーだった。数年前、健康に気を使う妹から「喉にいいよ」と勧められ、半信半疑で買ったまま棚の奥にしまってあったものだ。
スプーン一杯を、そのまま口に含む。
一般的な蜂蜜よりも、独特のコクと、どこか薬草を思わせる風味が広がった。正直、最初は美味しいと言える味ではなかったが、不思議と喉の奥にゆっくりと染み込んでいく感覚がある。お湯で溶かすのではなく、あえてそのまま。喉に直接触れさせるように、時間をかけて飲み込んだ。
その夜、寝る前にもう一度。
翌朝、目が覚めて最初にしたのは、唾を飲み込むことだった。
「あれ?」と思わず声が漏れる。完全に治ったわけではないが、あの嫌な痛みが引いている。喉の腫れた感じが、明らかに軽くなっていた。
それから数日、喉に違和感を覚えるたびに、マヌカハニーを少量なめる習慣を続けた。結果、ひどい風邪に移行することなく、いつの間にか不調は消えていた。
薬のような即効性を期待するものではないが、悪化させないとか回復を後押しするという点で、心強い存在だと感じた。
後から調べて知ったのは、マヌカハニーが持つ抗菌作用のことだった。
自然の中で、ミツバチが花から蜜を集め、時間をかけて作り上げた蜂蜜が、私たちの体調管理に役立っている。その背景を知ると、スプーン一杯の重みが、少し違って見えた。
今では、我が家の常備品のひとつになっている。
風邪ぎみのときだけでなく、忙しくて休めない時期や、少し無理をした日の夜にも、喉をいたわる意味で口にする。マヌカハニーは、私にとって治すためのものでなく、守るための習慣になった。
自然の恵みは、静かに、しかし確実に、私たちの生活を支えてくれている。
あの日、棚の奥から取り出したマヌカハニーは、喉の痛みだけでなく、体と向き合う時間そのものを、そっと取り戻してくれた気がしている。
(完)
蜂蜜エッセイ一覧 =>
蜂蜜エッセイ
応募要項 =>
Copyright (C) 2011-2026 Suzuki Bee Keeping All Rights Reserved.