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はちみつ入れた?

ほみたりか

電話の向こうで、母にこう尋ねられることがある。

「はちみつ入れた?」

それはたいてい、私がトマト料理を仕込んでいる時だ。ぐつぐつ音を立てている鍋と私はにらめっこし続けている。悪くはないが、何か一味足りない。

そんなとき、私はふと携帯を手に取り母に電話をする。料理の先生をしていた彼女から、冒頭のような返事が戻ってくる。

家を出てもうすぐ20年。その間主婦をしてきたが、彼女の味に、私はいまだに追いつけていない。

電話口で、母は少し考えたかと思うと、しばしば尋ねるのだ。

「はちみつ、入れた?」

「当たり前じゃん。」

私はたいていそう答える。トマト料理や梅肉和えなどにはちみつが欠かせないなんて百も承知だ。

母も母で、それ以上奥の手がないことも多く、そう、困ったわねえ、なんて返事が返ってくる。料理の酸味を和らげ、味の角を取り、全体を一つにまとめるはちみつは母の秘密兵器なのだ。

そして母に育てられた私も、はちみつが入っていると、その味に安心する。DNAにしみ込んだ、母と私とをつないでくれているものだ。

私もいい年になった。母は高齢で父はすでにいない。母が父のもとへ旅立つ日もいつか来るだろう。

その時が来たら、私は、ミートソースにはちみつを足すときや、ささみときゅうりの梅肉和えを作るたびに母を思い出すのだろうな、きっと。そう思うと少し胸が苦しくなるけれど、それもまたいとおしい記憶だ。

同じように日本のどこかで、誰かの思い出の中に甘いはちみつが刻まれているのだろう。

先日、人に贈り物をする機会があった。結構大人数に渡す予定だったので予算に合わず断念してしまったのだが、第一候補はやはりはちみつだった。だれもがもらって嬉しい、万能の贈り物だからだ。

いろいろな食材と仲良しのはちみつ。ヨーグルトやトーストはもちろん、チーズや生ハムにかけたっていい。スプーンでひとさじすくって、ただ舐めるのもいい。数年前からブームの腸活にもぴったり!

と、こんな風にはちみつの贈り物絶大な信頼があるのも、母との思い出が後押ししてくれているからだろうか。

そんな母は、数年前にハニーディスペンサーを購入していた。レバーを押すと適量のはちみつを出すことができる優れものだ。一人暮らしだというのに、はちみつを使う量には妥協しない、といったところだろうか。それに詰められたぱんぱんのはちみつから母の甘い愛情がこぼれ出てきそうだった。母の愛情とは測り知れない。

(完)

 

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