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ミツバチと共に90年――

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はちみつのチカラ

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 結婚三年目、待望の妊娠が分かった。不妊治療していたので、喜びはひとしおだった。
 ところが、予想外にひどい悪阻に苦しめられることになった。とにかく気持ちが悪くて、水もまともに飲めない。味覚が変わって、いままで好物だったものも受け付けない。ふらふらしながら何か食べられそうなものを探し歩く日々だった。
 ある日、夫が小さなビンを食卓に置いた。
 「はちみつを買ってきたよ。食べられる?」
 はちみつは、その時まだ口にしていなかった。子供の頃から、特別な時のごほうびというイメージがあって、普段はあまり食べない。 私は金色に輝くはちみつを見つめた。
 「食べられるかなぁ」
 スプーンでひとさじすくって、なめてみる。思わず大きな声が飛び出した。
 「おいしい!」
 力強い甘みが体中に染み渡っていく。たった一口でも、はちみつの持つ自然の力みたいなものを実感し、飲まず食わずの体がすこし生き返った。
 夢中ではちみつをなめる私を見て、夫がトーストを焼いてくれた。はちみつを塗ってみると、ぺろりと食べることができた。
 久しぶりに食べ物がのどを通って、はちみつパワーに感動する私。その横で、夫がつぶやいた。
 「はちみつにはご縁があるなぁ。ぼくらの結婚記念日、はちみつの日だよね」
 「え?そうだっけ?」
 「届を出したあとで、8月2日はハニーの日だって知って、うれしがっていたじゃないか」
 全然記憶にない。当時はそれなりにのろけていたんだなぁ。いまでは信じられないことだ。甘い日々はあっという間に過ぎ去ってしまった。
 私の場合、はちみつが体に合っていたみたいで、しばらくの間はちみつトーストが主食になった。それから少しずつ食べられるものが増えて、つらい時期を乗り越えられた。きっとはちみつに秘められた生命力が、私を助けてくれたのだろう。
 あのとき生まれた子供も、もう三歳。食後にはちみつヨーグルトを欠かさない、立派なはちみつ好きに育っている。蜜蜂さん、力をかしてくれてありがとう。

 

(完)

 

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