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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜がくれた友情

加藤 里桜

 

 私がアメリカに引っ越したのは高校一年生の時だった。見知らぬ土地、文化の違い、英語がほとんど話せないという現実。高校の英語の授業で習った「基本的な英語」は、実際の会話ではほとんど役に立たなかった。そんな中、元々体があまり強くない母は、引っ越しの疲れと慣れない環境のストレスで体調を崩してしまった。薬を買うために薬局に行こうにも、英語で説明する自信がなく、完全に孤立しているように感じられた。
 そんな時、ドアのチャイムが鳴った。出てみると、隣に住むキャロルさんが立っていた。彼女は小さな瓶を手に持ち、にこやかに「ハニー、ハニー」と言いながら笑顔を浮かべていた。私は何を言われているのか分からず、「アイムソーリー、アイドントスピークイングリッシュ」と繰り返した。それでもキャロルさんは根気よく身振り手振りで説明をし、最後にその瓶を私に手渡してくれた。
 それは蜂蜜だった。母にその蜂蜜を見せると、弱々しく微笑みながら「ありがたいね」と言った。それから私はキッチンでお湯を沸かし、蜂蜜をたっぷり溶かして母に飲ませた。喉に優しい甘さが広がるその一杯は、ただの飲み物以上の温かさをもたらしてくれた。
 その後、キャロルにお礼を伝えると彼女は「No problem! Bees make magic!(ミツバチは魔法を作るのよ!)」と言って笑った。その言葉が妙に印象に残り、私はそれ以来、ミツバチと蜂蜜について調べ始めた。
 蜂蜜は、ミツバチが花の蜜を集め、巣の中で酵素と混ぜて作り上げるものだ。その製造過程を知れば知るほど、キャロルが言った「魔法」という表現がぴったりだと思った。一匹のミツバチが一生懸命集めた蜜の量はティースプーン一杯にも満たない。それでも何千匹、何万匹ものミツバチが協力して巣の中にたっぷりの蜂蜜を蓄える。この事実に私は驚き、同時に感動した。
 キャロルがくれた蜂蜜は、ただの食品ではなかった。言葉が通じなくても通じ合える人の優しさ、そしてその背景にあるミツバチの努力と自然の奇跡。それは私にとって、どんな薬よりも心に効くものだった。蜂蜜の甘さには、ただの砂糖以上の甘さがある。それは、私にとっては新しい土地で出会った人々との絆、そして自然の中で生きる生物たちの大切さを教えてくれる甘さなのだ。

 

(完)

 

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