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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜とぼく

はちこ

 

 あれは3年前に別れを告げた給食の蜂蜜との出来事だった。僕は給食とは小学生の頃から中学生までの付き合いだった。家では特に蜂蜜との関わりはなくて、学校だけの関係だった。
 僕は蜂蜜が嫌いだった。でも、給食のパンはもっと嫌いだった。僕の学校は給食を残すことに厳しく、いつも無理矢理にでも口に詰めて食べなければいけなかった。パンをそのまま食べるより、蜂蜜をかける方がまだよかったから、蜂蜜をかけた。
 ある日、クラスの友達が、蜂蜜を使わない人の蜂蜜をかき集めていた。
「なんでそんなに集めているの?」と聞くと、
 「蜂蜜好きなんだ」僕はその単純な回答に思わず困惑した。
 「どこが好きなの?」と聞くと、
 「甘いから」とまた単純な回答が返ってきた。
 僕は甘いものはとても好きだった。でも蜂蜜は好きではなかったのだが、その瞬間何故蜂蜜が嫌いなのかわからなくなった。
 その友達に渡そうとしていた蜂蜜を僕はパンにつけた。美味しかった。それまで嫌っていたのが嘘のように、突然美味しく感じたのだ。僕は思わず蜂蜜をたくさんかけてしまって、パンが残っているにも関わらずに蜂蜜を使い切ってしまった。
 それ以来、給食のメニューに蜂蜜がある日が献立表に載っていると、1週間も2週間も前からずっと楽しみにしていた。
 気づけば、僕もみんなの蜂蜜を集めるようになっていた。たくさんもらえた日には、何個かポケットに入れて残しておいて、その日の放課後などに蜂蜜を直飲みした。
 そして、中学を卒業する前の最後の蜂蜜の給食の時、僕は最後の蜂蜜の容器を目に焼き付け、最後の味を噛みして僕の身体に染み込ませた。目から蜂蜜のように透き通った涙が溢れそうになった。
 あれから3年経った今、蜂蜜に対する愛は変わらないが、あの頃の感覚を味わうことはもうないだろう。

 

(完)

 

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