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蜂蜜エッセイ応募作品

ふるさとの味

嫁の目

 

同居する主人の両親の在宅介護を始めて9年経つ。
最初は義母だけだったが義父も認知症が始まり
ダブル介護の日々を過ごしている。
1番大変に感じた事は薬を飲ませる事だ。
高血圧やコレステロール、便秘薬に認知症の薬と沢山ある。
最初の頃はお薬カレンダーに入れていて自分でとってもらい
飲ませていたが日にちも曜日も分からないと
お薬カレンダーに入れても意味はない。
次に朝と晩の食事の後に薬を渡した。
薬を包んでいるアルミごと口にして、舌でキラキラとさせてみせた。
それならばと食事の後に
薬を出し小さな器に入れて渡したが
なんで飲まんなん?
と嫌がって困った。
思いついたのがハチミツとヨーグルトで薬を飲ませる事だ。
牛乳の入ったペットボトルにヨーグルトを少し入れ振る。
そのまま40度の保温できる機械に入れるとヨーグルトができる。
小さな器に手作りヨーグルトにハチミツを入れて薬を入れる。
食後に「美味しいですよ。」
とスプーンで混ぜながら渡す。
美味しい美味しいと喜んで薬を飲んでくれる。
すっかり子供に戻った主人の両親の笑顔。
かつて2人は美味しいハチミツを求めて
あちこちに出かけていた。
旅先の道の駅にハチミツが置いてあり試食ができると
必ず口にしていた。
最終的には義母が子供の頃に住んでいた山里の養蜂家のハチミツが気に入り
1升瓶で分けてもらっていた。
凝り症の義母は
良いハチミツが取れたら連絡してと電話を待ち侘びていた。
ふるさとの味と呼んで
毎朝舐めていた。
元気の源とも言っていた。
私が薬に混ぜているハチミツは
近所のドラックストアでどこでも手に入る品だ。
目の回るようなダブル介護の毎日でそこまではできない。
もうふるさとのハチミツの味とは違うとは言い出す事は無い。
薬入りヨーグルトハチミツを
美味しい美味しいと器ごと舐めている義母の姿が愛おしく泣きたくなった。

 

(完)

 

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