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蜂蜜エッセイ応募作品

風邪と根性とはちみつと

三池亜子

 

 根性。それが私の夫の口癖だ。気が滅入りそうになったとき、体調が悪くなりそうなとき、そんなときに何より重要なのは、夫曰く「根性」なのだそうだ。
 夫と知り合ったばかりの頃は、そのいささかマッチョイズムを感じる主張に反発を覚えたりもしていたけれど、付き合いも十年以上になった今では、私もすっかり「根性」が口癖になりつつある。もちろん、根性ばかりを大切にして心や体に負荷をかけ過ぎてしまってはいけない。けれど実際、「病は気から」なんていう諺もあるくらいだし、根性とか気合とか、そういうものは案外、馬鹿にできないものだ。
 とはいえ、根性も万能ではない。気の持ちようだけではどうしようもないとき――例えば本格的に風邪を引いてしまい、ひどく喉が痛むときなんかは、根性だけでどうにかするのは難しいだろう。そんなとき、根性第一主義の私の夫がどうするのかといえば、はちみつの頼るのである。夫は厳かな手つきではちみつの瓶を取り出すと、黄金色にきらきら光るはちみつを、大きなスプーンでひとすくいほど小皿に取り出す。そして、そのはちみつを、安静にしながら少しずつ、少しずつ舐めるのだ。効果は覿面だ。小皿の中のはちみつがほとんどなくなる頃には、しつこかった咳も、ガサガサに掠れていた声も、すっかり回復している。そうして夫は嬉しそうに言うのだ。「やっぱり風邪には根性とはちみつだな」と。
 夫の影響を受けて私も、最近は喉に違和感を覚えたときには早めにはちみつに頼るようになった。直接舐めていると、そのうちに甘みが舌の上で飽和してしまうから、ときには紅茶に垂らしたりパンにつけてみたりと、アレンジを加えることもある。そうして、根性だけでは補いきれない不調をはちみつに癒やしてもらっているおかげで、私はこの冬、あまり体調を崩すことなく過ごすことができた。
 はちみつが喉に効くことは、古来から民間療法として有名だ。また、コロナ禍やインフルエンザの流行の際には多くの医療従事者が、喉が痛むときははちみつを舐めてみて、といった趣旨の発信をしていた。感染症の流行で咳止めの薬が枯渇しても、確かにはちみつならば多くの家に常備されている。甘くても美味しくて、しかも私たちの体を助けてくれる。はちみつの力と根性の力で、私はこれからも、日々を乗り切っていきたい。

 

(完)

 

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