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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

はちみつが溶かしたあの日の思い出

新田ミキ

 

 これほどギャップが大きいものがあるだろうかーー。

***

 

 小学4年生で越してきた団地には、どこにでもあるような公園があった。ブランコに滑り台―――いわゆる"定番メニュー"が揃う。

 近所には同年代の友達がいた。男女問わず皆仲が良く、学校から帰宅すると自然と公園に集まるような毎日。何をするわけでもなく、学校が終わると当たり前のように集まっていた

 近くには小さな林のような場所があった。草がボーボーと生い茂っている。

 公園に飽きた小学校5年生の初夏のこと。背丈ほどある雑草をかき分けた先に秘密基地を作った。私たちだけの秘密の場所。何があるわけではないのだが、その空間にワクワクした。

 「あなたはここを広げて。わたしはここまでの道を作るね!」

 6年生のお姉さんが仕切る。みんなで役割を決め、着々と仕上がる秘密の空間に誰しもが期待していた。

***

 雨が降った。

 秘密基地づくりを始めて3日目のこと。学校から帰り、5時のチャイムが鳴るまでの間に作っていたため、完成までに時間を要するのである。

 ようやく完成が近づいてきた最中に降った雨だった。

 作るのは楽しかったが、なんせ重労働。子どもながらに疲れを感じていたせいか、雨で外に出られない日に少しホッとしていた。

 翌日、作業は再開。

 かろうじて形は保っているが、風があったせいか草木が乱れ濡れていた。

 基地を整えていると思わぬ仲間を見つけた。バッタやアリ、名もわからぬ昆虫たちだ。外遊びが好きだった私たちは昆虫に群がる。「わー!」と集まり観察。

 虫は虫の世界があるよね

 お姉さんは言う。私たちは捕まえることなく、共に過ごすことにした。

***

 「きゃー!」

 緊急事態が起きた。

 

 蜂だ。

 昆虫と共存することに決めた私たちであったが、さすがに蜂は仲間に入れられない。刺されたことがある友達は大きな声で注意を促した。

 逃げる。逃げる。逃げる。

 ひたすら、ただひたすら草むらを走り家の方へと向かった。

 やっと振り返ることができたのは、"いつもの"公園。遊びなれた公園に安心感があったのか、やっと足が止まったのである。

 こんなに汗が滴っているお姉さんは初めて見た。冷静さを保つ余裕がなかったことを子どもながらに感じた。

 蜂はこわい生き物ーー。

 この時に蜂への恐怖が脳に刻まれた。

 

***

 

 中学生の頃だろうか。

 はちみつができるまでの経緯を知った。はちみつは蜂1匹1匹の努力の結晶であることを。しかも1匹の力ではなく、団体戦だとは驚きだった。

 抗菌、免疫、腸活、美容。

 はちみつは私の生活に欠かせないアイテムだ。

・喉が痛くなったらはちみつ大根
・ヨーグルトにはちみつ
・はちみつ配合のリップクリーム

 好きなのだ。

 期待できる効果や効能はもちろんだが、体に染み渡る"味"がたまらない。

 こわいこわい蜂が作る蜜は、熟した果実よりも甘く、万能。危険な生物から生み出される喉に絡みつく甘さーー。そのギャップによる効果なのかわからないが、クセになる。

 逃げ回ったあの日の思い出も、今は甘みを感じるいい思い出。

 鮮明に記憶に残るその思い出が私をほっこりさせるのも、蜂のおかげと言えるかもしれない。

 

(完)

 

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