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蜂蜜エッセイ応募作品

思い出の蜂蜜パンケーキ

ルーラ

 

 私は10歳の頃、病気で母を亡くした。母が作ってくれた料理は、いつも甘めだった。特に好きだったのは、毎週日曜日の朝に焼いてくれたパンケーキ!蜂蜜をたっぷりかけたその味は、薄れていく記憶の中で母と過ごした幸せの味そのもの。
 先日、母の妹である叔母と何気なく料理の話をした。おじいちゃんが職人という事もあり、母達が育った家では料理はほとんどが味が濃くてしょっぱかった。だから母も叔母も塩辛い物が好きだったし、甘いものは少し苦手だったのだそうだ。それなのに、なぜ母の料理は甘かったのかなと叔母に尋ねると、「子供達が喜ぶからに決まってるでしょ。」と笑っていた。しかも、私達の健康の為に、料理にもおやつにも蜂蜜を入れてくれていたそうだ。30年越しに初めて聞いたエピソードで涙が出そうになった。
 当時子供の私には、母の死のショックに耐えきれなかったのか、記憶の隅っこに押し込んでしまっていた。辛くて寂しくなってしまうから、できるだけ思い出さないようにしていたのだ。でも、叔母から聞いた話で一気に思い出が蘇った。
 台所で鼻歌を歌いながら料理をする後ろ姿、スーパーの買い物袋を片手に持ちながら繋いでくれた手がいつも暖かかったこと、仕事をしていたから忙しかったのに必ず手料理を作ってくれたこと、他にもあれやこれや。。。病気になって自宅療養をしていた時でさえ、最後の最後まで自分の事より私達の世話をしてくれていた。
 たった10年しか一緒にいられなかったけど、私は母からたくさんの大きな愛情をもらっていたのだと思った。
 そういえば、結婚をしたばかりで料理に四苦八苦していた頃に主人から「甘めの味付け美味しいね」と褒めてもらった事があった。母から直接、味付けを教わったことは無かったのに私もいつの間にか蜂蜜を多用している。子供の頃に食べた母の味が、色々な意味で今の私の基礎となっているのだろう。
 私はもうすぐ母が亡くなった歳と同じになる。家族の健康や幸せを願って尽くしてくれた母みたいに、正直今の自分はなれていないと思う。母に恩返しもできなかった。でも、再婚もせず男手一つで精一杯育ててくれた父に2倍親孝行するつもりでちょこちょこ実家にも顔を出しているから、後は任せてほしい。私にも家族がいるし、何も心配いらないと伝えたい。
 ただ一つ、あちらの世界でまた母に会う事ができたなら、あの蜂蜜の乗った甘いパンケーキを作ってほしいな。

 

(完)

 

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