詩川幸
昔から、夢中になると全ての力を注ぎこむ人間だった。「将来への投資だから」とお金を湯水のように使い、「誰にも負けたくないから」と寝食を忘れて没頭する。そんな私がひとり暮らしをすれば、貧困生活を送ることなど想像に難くなかった。
当時、創作活動に入れ込み始めた私はあっという間に、一日一食、眠たくなったら気絶するように眠るという生活を送り始めた。浮いたお金で本を買い、浮いてなくても「資料だから」と本を買った。
そんな日々が続く、主食は六枚切りの食パンと目玉焼き。毎日フル稼働する脳みそは甘いものを求めて当然だろう。スーパーのお菓子売り場でにらめっこをしていると……蜂蜜に出会った。六百グラムで約二千円、毎日食べたとしても流石に一ヶ月は持つだろうと購入。
食パンにかけたり、時にはヨーグルトにかけたり、毎日の糖分補給に大変お世話になった。しかし、小腹が空いた時に一々食パンを消費していたらキリがない。ついに私はスプーン一杯に蜂蜜を乗せ、口に含む。うん、もうこれでいいじゃん。
チョコレートのように蜂蜜を食べていると、一ヶ月の持つと思っていたそれは、約二週間で空になった。あまりにハマってしまったのでもう一瓶買おうと思ったが、糖尿病という言葉が頭を過ったのと、単純にお金がないから止めておいた。
後日、実家に帰ると親が「ちゃんとご飯食べてるの?」と聞いてきた。「しばらく甘いものばっかりやったわ」と、この話をしたところ「あんた、ほとんどクマやね」と言われてしまい、少しの間、私のあだ名は「プーさん」になった。
今では狂気的な熱も少し落ち着きを見せて、蜂蜜漬けの生活は終わりを迎えたが、また忙しくなればきっと手を出すだろう。これを見て「信じられない」と絶句している人たちは、きっとクセになるので是非試してみてほしい。
(完)
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